自治体法務の備忘録

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基準政省令、改正時の経過措置は?

 拙blogでも何度か取り上げておりますが、第1次・第2次一括法の制定に伴い、法律からの委任により、今年度中に、各種の基準を定める条例を自治体は定めなければいけません。

経過措置1年なんてあっというま!

と、『ポイント解説「地域主権改革」関連法』(第一法規)のオビには記載がありましたが、まったく、ねえ。
 条例整備の手法として、

【コピー型】政省令により提示された基準の内容をそのまま条文上に制定する手法
【リンク型】省令内容を改めて規定する手法はとらず、対象条項の引用し基準を定める手法

の2種類の手法について、自治体法務合同研究会水戸大会における「びわ自治体法務研究会」の発表内容をご紹介させていただいております(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20120727/p1)。
 さて、リンク型を採用した場合(その判断の是非はともかく)、幾つかの問題点が指摘されていますが、一番大きなものが、

  • 基準例を示す政省令が改正された場合、自治体の判断とは離れ、自動的に規定内容が「塗り変わって」しまう。

であろうかと思います。
 そのこと自体への対処については自治体ごとに判断すべきでありましょうが、法制執務的に気になる質問に接しました。
「このたび基準例を定める政省令が定められた後に、その内容が改められる必要が生じた場合、一部改正政省令に基準改正に関する『経過措置』は置かれるのだろうか?」
 「参酌」「標準」「従うべき」の3種類の自由度が自治体に提示されているにせよ、その取り扱いについては条例に任されている訳ですから、一部改正政省令においては「経過措置」自体の制定は見送られても良いような気がします。
 とはいえ、このたび整備された基準例を定める各政省令を見ても、このたびの地域主権改革の意図を積極的に汲むよりは、従前の規定を横滑りに参考例とする姿勢が強いように思えます。であれば、経過措置の取り扱いについても、従来の発想に変化があろうとは考えにくいところです(特に省令レベルにおいては)。
 であれば、参考例を定める政省令への「リンク式」をもって条例が整備された場合、一部改正政省令における経過措置までが「リンク」できるのか、という疑問が生じます。
 基準条例については、随分と論文を読んだり、識者と意見を交換したつもりですが、この点について話題に上った記憶はありませんでした。あまりに技術的な問題だからでしょうか。
 上記の「びわ自治体法務研究会」の発表の際に、上記について発表者に意見を求めたところ、

  • 技術的には、「リンク」の際に、政省令を直接引用するのではなく、委任の根拠となる法律の規定(「○○法第○条の規定により条例で定めるべき○○の基準」など)を引用することで対処できないか。

とのご意見をいただきました。
 とはいえ、中盤にも書きましたように、今後の基準例の改正手法も不透明です。引き続き自治体が対処に気を回さないといけない場面は多そうです。