基準条例における独自基準
その山本博史さんですが、「ガバナンス」誌(ぎょうせい)最新号(9月号)の連載「地域主権改革と自治体実務」に、基準条例における独自基準に関して記述されています。
特に頷かされた部分を引用させていただきましょう。
地域主権改革を実現する上で、義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大の目的は、独自基準の策定そのものではなく、地域の自主性・自立性の向上にあったことに立ち返るべきである。独自基準の策定そのものが目的化してはならないのである。
(103頁)
※強調はkei-zuによる。
山本さんは、「自治日報」紙の記事中では、一般市町村が独自基準を定めていないことが批判的にとらえているようだ、と懸念を示されています。また、「トレンド志向による他の自治体の独自基準の模倣があったとすれば、それは地域適合的であるとは限らず、むしろ政省令に準拠した方が優れている可能性さえも否定できない」とも。
私自身、いくつかの場における意見交換の中で山本さんと同様の困惑を思うことが少なくありません。引用ばかりでも申し訳ないので、私自身の記述も引かせていただきます。
「上書き」論を端緒とするこのたびの法改正ですけれど、結果として、自治体に制定を要請されるのは「委任条例」です。法律の「委任」によるということは、自治体が条例を制定するに当たって、その内容は委任の範囲に限定せざるをえません。
であれば、自治体が基準を定めるに当たっては、積極的にその独自性を競い合うことよりも、委任の根拠となる個別の法律の目的をそれぞれの自治体で達成する条例の制定が一義的に要請されているのではないか、と思います。
(24頁)どう変わる?どうつくる?第2期地方分権改革 条例の策定と審議
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上記では踏み込んでいませんが、地域における法律の目的の達成のためには政省令で定める内容がふさわしい、とする判断も尊重すべきでしょう。
何より、法律の目的を達成しようとする政策決定においては、いわゆる「ゆるキャラ」のような「ユニークさ」が単純に求められるものではないからです。
なお、同誌の別項では、拙blogでもご紹介させていただいた(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20120717)、
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自主的に住民ニーズを把握する機会をいかに活用し、条例化の判断をしたのかがポイントの一つになる。必ずしも独自基準は必要なく、判断の結果として、今回は国と同じ基準になったとしてもやむを得ないこともある。
(133頁)
前述の山本さんのご執筆も、自主性・自立性を高めるための手法が最後にまとめられています。
ここで、私たちが念頭に置かなければいけないのは、上記のご発言に続く岩崎先生の次のお言葉でしょう。
ただ、一括法の関係で多くのヒアリングをするなかで自治体間の温度差を感じた。やる気のある自治体の取り組みから、対応の遅れた自治体が法律上の可能性に気づくことに期待している。