自治体法務の備忘録

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「改正附則」は一部改正の名残り

 「○○○○法附則」と言うとき、六法全書で該当する法律に複数の附則がある中でどれを見れば良いの?、と聞かれることがあります。
 正解は「一番最初に記載されたもの」です。これは、法律が制定されたときに始めから記載されていた附則で、「本法附則」や「原始附則」と呼ばれています。
 それでは、ひとつの法律になぜ複数の附則が掲載されているのでしょうか。
 制定された法令は、対象とする事項・状況の変化や政策の目的・内容の変更に応じて、その内容を変更する必要が生じます。
 法令の改正方法には、

  • 既存の法令に対して次々に積み重ねられていく「積み重ね方式」
  • 改正法令の内容が改正の対象となった既存の法令の内容に溶け込んでいく「溶け込み方式」

の2つがありますが、「積み重ね方式」がアメリカ合衆国憲法などで採用されているのに対し、わが国では、原則としてすべて「溶け込み方式」により改正が行われることになっています。
 このような「溶け込み方式」による改正法令(「○○法の一部を改正する法律」など)の本則の内容は、その改正法令の施行に伴って実体がなくなってしまいます。
 一方で、その附則は「溶け込み」ませんから、その取り扱いに工夫が必要になります。改正附則には、改正内容の施行日のほか、改正に伴う経過措置など重要な事項が少なくありません。
 これら改正法令の附則(「改正附則」といいます)は、元の法令とは別個の法令ですが、六法全書などの法令集では、便宜上、元の法令とまとめて、その公布の順に掲載しています。したがって、何度も改正があった法令では、「改正の名残り」として、いくつもの「附則」が並んでいるわけです。