自治体法務の備忘録

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基準条例「作っちゃダメ」って書けます?

 先日の拙blogでもご紹介した(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20121119/p1)、内閣府による参考事例の公開はもちろんありがたいことですが、以前にも書きましたとおり(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20120902/p2)、独自基準の制定自体が目的と理解されないか一抹の不安を持つところです。
 というのは、今回の法改正は、自治体が自らの法執行に当たり、各基準の意味を吟味することこそが主眼であって、内容が吟味されない形式ばかりの独自基準は、かえって当該自治体の法執行の妨げになる可能性すらあり得るからです。
 先般、ある自治体の方から、地域主権一括法に基づく基準条例の制定に当たり、独自基準の取り扱いについて質問を受けました。
先方「基準の制定が求められている条例で、基準の対象となる施設を『設置できない』と書くことはできますか?」
私「え?」
先方「従来は政省令に基づく基準に従って整備しなければいけない施設について、うちの自治体では『作っちゃダメ』って書けます?」
私「自治体の公物なの?」
先方「いや、事業者さんが作るものを含めて」
私「いやあ、無理でしょう。だって、所定の条件に合致した場合は存在を認めるのが法の趣旨だよ。法律は住民の方を向いているばかりじゃなく、事業者さんの方にも向いているんだから」
先方「パブコメ中ですが、そんな内容の条例があるんですよ」
私「ハードルを上げて、実際に設置が難しい基準を定める方法はあるけどね。でも、その場合も、高いハードルの合理的な説明が必要でしょ。『作らせない』は理由にならない」
先方「そうですよね」
私「あるいは、他の行政目的の達成のために『横だし』の規制をするとか」
先方「でも、それは今回の法改正の果実ではないですよね」
私「もちろん」
 今回の委任条例の形式が窮屈であることは承知しておりますが、その窮屈さを訴えるより、西尾勝先生のおっしゃるとおり、自治体は今回の分権の果実を十分に理解し、活用することこそが今は先決であるのかもしれません(嘆息