自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

首長規則と会議規則

 随分とカウンタが回ると思ったら、洋々亭さんのところの掲示板の経由が多い様子。

政務活動費の交付・報告に関する手続等を定める規則ですので、交付決定をする市長が規則を定めることが妥当だと思うのですが、文書法制担当は、議会規則で定めるべきと考えています。
http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/yybbs/#44902

 上記の質問に対し、掲示板上では、拙blogと併せて(やはり拙blogでもご紹介させていただいた)吉田利宏氏(元衆院法制局参事)の文章を紹介されています。
 吉田さんの文章の中では、このたびの自治法改正に伴う政務活動費の内容を条例整備するのに際して、その詳細を規定する方法に関し、

 議会の運営に関しては会議規則というものがあり、本当はこれで定めるのがピッタリです。ところが、会議規則は法定事項以外には定めにくいと感じている議会も多く、そうした現実から「議長が定める」を次善の策としてお勧めしています。
http://www.dh-giin.com/pdf/bknumber/vol35/GiinNAVI_Vol35_14.pdf

と記述されていました。ここで議会が「会議規則は法定事項以外には定めにくい」とあるのは、おそらく全国市長会により準則が示されているところによるのでしょう。
【標準市議会会議規則】http://www.si-gichokai.jp/official/rules/kaigi/
 さて、「『規則制定権』が議会にあるか」というと、ちょっと混乱します。「首長が定める『規則』」と「議会が定める『会議規則』」は、根拠を異するものです。

地方自治法
〔会議規則〕
第百二十条 普通地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならない。

 田口一博先生(新潟県立大学)は、

  • 会議規則は議会運営の根幹であり、会議規則より優先される条例があるはずない。

と指摘されています。
【会議規則は条例化できない.........】http://g-ken.life.coocan.jp/Nifty/G-ken_Blog_2012/entori/2013/1/21_hui_yi_gui_zeha_tiao_li_huadekinai.........847.html
 ただ、個人的には、

  • 議会における申し合わせを「規程」と呼ぼうが「会議規則」と呼ぼうがかまわない。(「〜規程」という名称の条例だってあります。(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070125))
  • 一方で、自治法が要請する「会議規則」に、定められるべき範囲は示されていない。
  • したがって、議会の自立権の範囲内であれば、「会議規則」には、「条例」の格上・格下いずれのものがあってもかまわない。

のではないかと思います。
 なお、横須賀市では「議会規則」として、いくつかの規程(ルール)があります。
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/reiki/reiki_taikei/r_taikei_02.html
 上記は、議会における諸規程を「条例−議会規則」の序列に整理したとのことで、田口先生におかれては批判的かもしれませんが、考え方としては興味深いところです。
 となれば上記で、自治法130条で「議長が設ける」ことになっている傍聴規則が、わざわざ「議会規則」になっているのは確信犯でしょう。
 上記の横須賀市の試みについては、

議会基本条例の考え方―分権と自治の扉をひらく

議会基本条例の考え方―分権と自治の扉をひらく

の95ページ以下に詳しい解説がありますので、ご興味ある方はご確認ください。