自治体法務の備忘録

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新書濫読

 id:hachiro86さんのところのコメント欄で、最近読んだ本についてちょっとキャッチボールをしました。
 hachiro86さんは「リコメンド大歓迎」の看板を掲げていらっしゃいますが、あまりよそ様のコメント欄に書名を並べるのもためらわれます。今回は、備忘録的に最近読んだ新書を並べてみましょう。

日本財政 転換の指針 (岩波新書)

日本財政 転換の指針 (岩波新書)

 複数の方に「良い本だから、絶対読め」と指摘されて手に取りました。 hachiro86さんも書かれていますが、日本は先進国の中でも「小さな政府」を実現しています。実感はありませんが、租税負担率も実は最低水準と言って良い。
 ではこの負担感は何かというと、中間層に受益感が乏しいことによる、と指摘します。一方で「小さな政府」を実現したのは、高度成長期における「土建国家」の設立であったと指摘します。「土建国家」は利益分配機能だけではなく、社会保障をも含めた国家的制度であったとの指摘は、興味深いものでした。
キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)

キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)

 少々変わった大学の先生が高校生相手に法学の基礎を教える、というとありがちな感じがしますが、その内容が法解釈の基礎のみならず、ローマ法にまで遡った法制史や法哲学となると尋常じゃない。
資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

 経済を社会学歴史学の視点から説明するものとしておもしろかったです。
 国家の性格を「陸の国」「海の国」と二分し、英米を後者として(スペインや中国は前者)両者の拮抗が経済上の大きな転換になる、という指摘はやや極端な感がします。
 それでも、商業的な発想を根幹に置くイスラム教がなぜ資本主義を生み出せなかったか、という説明は興味深かったです。団体に人格を認める「法人」という発想は、キリスト教教義の三位一体に基づくものではないのか、という指摘は新鮮でした。
西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

 さて、かくも西洋史キリスト教と切っては切れない中であるのですが、一方で、日本人が大好きな印象派はそのような宗教的背景から美術を解放するものでした。
 高校生向けの新書である本書は、「絵を読む」という技術をわかりやすく説明する良書です。理屈っぽい私のような人間には楽しい。
虹の西洋美術史 (ちくまプリマー新書)

虹の西洋美術史 (ちくまプリマー新書)

 引き続き、ちくまプリマー新書。こちらは古今の「虹」をテーマにした絵画を取り上げ、そこに込められた意味を解説します。
 虹は「夢」「希望」の象徴であると同時に「はかなさ」も意味します。虹は7色か3色かなんて説明もあって楽しい。
イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

 ちくまプリマー新書からもう1冊。西欧文化イスラム文化のコンフリクトは、やはりディスコミュニケーションによるところが大きい。
 イスラム諸国の「民主化」が宗教化に向かい、政教分離を前提とする西欧型の「世俗主義」に背を向けようとする事態は、改まって言えば、文明のあり方を考えさせられます。翻って、我が国の文化のあり方は? 美術と言えばスポーツですよ(そうか?
 著者は50歳のギャグマンガ家。余談ですが、私も何冊か持ってます。
 そんな著者がひょんなことからマラソンを趣味とし、仲間とマラソン大会で奮闘するエッセイ。
 読むと走った気になります(走らないけど
「編集手帳」の文章術 (文春新書)

「編集手帳」の文章術 (文春新書)

 「編集手帳」とは読売新聞朝刊1面のコラムです。限られた字数で多数の読者に向けた文章を連ねるテクニック。参考になります。
 文春新書からは著者の既刊が他にも2冊ありますが(「名文どろぼう」「名せりふどろぼう」)、いずれも名著。
 ただ、文章は多少の「引っかかり」がある方が読者の気持ちに残るんだよな、とは多少の自己弁護を含めた所感ではあります。