自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

民間委託はどこまで可能か

 民間委託を進める自治体の方が公権力の行使に関する議論を「神学論争」と断じておられたことは以前にご紹介させていただいたことがありますが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060416/p1)、それがドグマであるかどうかはともかく、「行政」のレーゼンデートルではありましょう。
 公権力性がないことが明白な部分として窓口業務委託を行う自治体は少なくない現状ですが、東京都足立区は、定型的業務のうち公権力の行使の範囲以外の部分を積極的に民間委託に切り出そうとする試みを進めています。

 地方自治体が担う国民健康保険の管理・運営業務の民間委託が動き出す。東京都足立区は全国で初めて、2015年から窓口業務、保険料計算、徴収など一括して民間企業に委ねる。民間のノウハウを取り入れ、経費削減と業務効率化をめざす。
http://www.nikkei.com/article/DGKDASFB2706B_X20C14A2MM8000/

 記事を読んだときは、少なからずどきっとしましたが、区が公開している報告書を読むと「公権力の行使」「偽装請負のリスク」「分割損」の観点も踏まえ、専門・定型業務の抽出が行われたそうです。
【日本公共サービス研究会中間報告書】http://www.city.adachi.tokyo.jp/sesaku/documents/chukanhoukoku.pdf
 興味深かったのは、会計管理(審査・出納保管)業務に関する以下の記述で、虚を突かれる思いがしました。

多くの自治体からテーマ設定の要望が挙げられるとともに、戸籍事務における身分関係の形成や国保における資格・賦課のような「公権力の行使」の領域がないため、外部化が展開しやすい専門定型業務である。
(13ページ)

 上記の報告と同時期に、足立区は「第二次経営改革プラン」を公開しており、これら積極的な民間委託も経営改革の一端です。人材育成や電子自治体の推進を含むプランの内容は、以下のリンクをご参照ください。
【足立区 第二次経営改革プラン】http://www.city.adachi.tokyo.jp/sesaku/documents/plan2.pdf