講師用の小ネタ集
研修の講師を頼まれることがあります。こればっかりは「慣れ」ですが、技術的なテクニックも少なくはありません。
手の内を少々お見せすることになりますが、講師を務められる機会がある方に、私が実行している小ネタをいくつかお教えしましょう。
1 参加者相互の挨拶
講習の最初は、講師、参加者ともにぎこちないものです。庁内の研修であれば、参加者はたいてい顔見知りですが、そのような場合でないときは、隣席ともよそよそしさが漂います。
そんなときは、「こんにちは!」と切り出した後、「ちょっと立って隣の人に挨拶しましょう『こんにちは!』」と、参加者相互に挨拶していただきます。
演習を行う研修の場合は、参加者の間に交流が不可欠ですので、早めのブレイクスルーは効果的です。
2 自己紹介で関係性を提示
たいていの場合、参加者にとって講師は見知らぬ他人です。それが偉そうに前から話しているのですから、無意識的にでも警戒感がないはずがありません。距離感を縮めるためには、どんな内容であれ、相手との「関係性」を提示するのが効果的です。
「学生時代、このあたりに住んでいたんですよ」「こっちの名産が好物でね」など、なんでもかまいません。
3 目的・手段・効果を明らかにする
講演を始める前に、研修の「目的・手段・効果」を箇条書きで、ホワイトボードに板書します。例えば、地方自治法の説明でしたら、以下のように書きます。
- 目的 公務員として必要な地方自治法の知識を習得する
- 手段 講義の聴取と参加者相互の意見交換
- 効果 日常の仕事をしやすくするとともに、住民サービスを向上させる
私は使わないのですがパワーポイントでも良いと思います。
端的にロードマップを示すと、入り口の心理的抵抗が低くなります。
4 参加者の視線を交差させる
講師を一方的に見つめるスクール型の講演は、参加者にとって単調です。
演劇では、観衆の視線が交差する舞台の構成が好まれるようで、これは、観衆に参加意識を持たせるものであるからでしょう。
私自身はゼミ形式で平場の講義を行うのがやりやすいですが、参加者が多い場合はそうもいきません。
そのような場合は、仕方が無いので、会場を歩いて回って参加者の視線を動かすよう努めています。
5 質問の機会を与える
私個人は、研修は「ライブ感」を持って楽しむものと考えています。講師にとっても、想定外の質問って楽しいのです。
ただし、質問の機会を与えるといっても、前から順番とか、日にちと同じ数字の参加者番号の人を指名というのではいけません。「参加できる空気」を作ることが大事です。
以前は、レジメに沿った説明の合間に「ここまでで何か質問は?」と声をかけていたのですが、あまり手が挙がらない。ところが、評論家の岡田斗司夫氏がうまい方法を行われていました。
「ホワイトボードの隅に質問コーナーを作ったから、質問があればメモを貼って。内容は何でも良いよ」
そして、正方形の大きな付箋をあらかじめ配っておきます。これで質問に対する心理的な抵抗は、ぐっと減ります。私自身の経験だと、心理的な抵抗が減ってか挙手による質問も増えます。
6 選択問題で理解を即す
説明の合間に、選択問題を出すことがあります。一方的な講義にリズムを与え、退屈を防ぎます。
今まで話した内容の確認(ここまでのことわかった?)のこともあれば、これから話す前振り(こんなこと知ってる?)のこともあります。
なお、選択問題への回答は、以前は参加者を順番に当てていたのですが、藻谷浩介氏のご講演で「さあ、何番でしょう? せーのっ!」で、数字を示した指を一斉にあげさせているのを見て、これだ! と、今は真似ています。
7 休憩の合間には雑談を
講演にある程度の時間をいただいた際は、合間に休憩を入れています。集中力の限界は、やはりあるからです。
最近は、休憩の終わり数分前、ぼちぼち席に戻ってきたかなー、という頃から雑談を始めます。内容は、最近の国の政策の動向や、自身の失敗談など。もちろん「雑談」ですから、トイレや離席は自由です。講演にマイクを使っている場合は、オン・オフで本論と雑談の切り替えを明らかにすることができるでしょう。
雑談の効用はいくつかあって、まず、休憩終了後の再開のため「場を暖める」ことがあげられます。また、雑談の形式をとりながらも聴衆全体に話しかけますので、楽屋話にも似て、参加者との距離感を縮めることができます。*1
とはいえ、小ネタばかりでは仕方がなく、参加者に得るものがなければいけません。
ところがこれが一番難しいんですよねぇ(^^;
*1:参加者のためとは思っても、あまり休憩を入れると主催者に申し訳なく思うことから、私自身の罪悪感を減らす意味もあります。