自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

自治・分権再考

自治・分権再考

自治・分権再考

 ご紹介が遅れてしまいましたが、地方分権改革で中心的なご活躍をされ、日本の地方行政においても早くから自治の実践を積み重ねてこられた著者による講義録。2012年に列島を縦断して行われた「10時間集中セミナー」がまとめられた内容です。
 私の手元にある本書には、先日の「かながわ政策法務研究会」江ノ島合宿で著者のサインをいただきました(^^
 講義録なので読みやすい一方、著者のご経験とご高察の深さから読みごたえのあるものになっています。
 結果的として地方分権推進委員会が平成の大合併にゴーサインを出さざるを得なかったことについては、

平成の市町村合併は、あくまで国会議員主導で行われたものであって、震源地は国会の先生方であったのである。官僚機構側には詳細な設計図のないままに合併促進の見取り図を書けと指示され、闇雲に始まったものなのである。
(69ページ)

と、当時の政治的背景が語られるともに、三位一体改革を巡る自治体への税源以上については、

自治体側にとって衝撃であったのは、地方交付税と臨時財政特例債の大幅な削減が行われたことであった。これは、自治体側が全く望まず、全く想定していなかった措置であった。税源移譲を飲まざるを得なかったことの敗北感から、財務省が巻き返しを図ったものといえようが、地方六団体側に立つべき総務省もこれを押さえきれなかった。
(84〜85ページ)

と振り返った上で、

財務省市町村合併推進の急先鋒で、合併が円滑に進むのであればということで、地方分権改革推進委員会財務省出身の事務局次長から主計局を説得してもらい、いわば官僚主導で補助財産運用の弾力化が実現することになったのである。
(86ページ)

と、様々な思惑が交錯する当時の様子が語られます。
 著者は最近の地方分権改革の流れが「自由度拡充路線から所掌事務拡張路線へと傾斜し始めている(195ページ)」と懸念を示される一方で、自治体職員にたいしては「公共感覚」の重要性について説かれてます。
 本書の末尾でも触れられていますが、現在の制度が構築される以前に自治制度はどうあったか、という大きな視点での振り返りもあり、いろいろ考えさせられます。
 それらの内容の確認を含め、幅広い方々に本書を開いていただければと思います。