自治体法務の備忘録

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紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている

「kei-zuさん、次号の『法学セミナー』は休刊です。締め切りは1か月後倒しにしてください」出版社からの連絡に戸惑う私に、編集の方が続けました。「紙がね、ないんですよ」
 震災直後のことです。本書の著者も書かれていますが、東北の製紙工場が出版を支えていることを私は全く知りませんでした。
 本書は、日本製紙石巻工場の被災から再建までのドキュメントです。誰もが被災者であって、体力の消耗とつのる不安の中、工場長は重大な決意を口にします。

「まず、復興の期限を切ることが重要だと思う。全部のマシンを立ち上げる必要はない。まず1台を動かす。そうすれば内外に復興を宣言でき、従業員たちもはずみがつくだろう」
(106ページ)

 示した期限は「半年」。その場の誰もが無理だと思ったそうです。津波に襲われた工場の敷地内には汚泥ばかりか、家や車が流されてきており、遺体の収容も終わっていません。未だ電気も復旧しない状況です。
 けれども、従業員の方々は示された具体的な目標に一丸となります。著者は「明るい話題のない被災地で、彼らがすがりつくことができる、唯一具体的な希望ではなかったか(111ページ)」と記述します。
 地域の人達に支えられ、また同社ばかりか同業他社の工場にも支えられ、半年の期限は達成することができました。そのドラマの間に挟み込まれるのは、被災地の過酷な状況の描写です。
 本書の表紙は、再稼動第1号となった「8号マシン」。マシンに架けられた千羽鶴の前に並ぶ関係者の皆さんの胸中はいかばかりでしょうか。

紙に生産者のサインはない。彼らにとって品質こそが何より雄弁なサインであり、彼らの存在証明なのである。
(242ページ)

 出版社ごとの文庫本の紙に特徴があることも本書を読んで始めて知りました。「角川オレンジ」などの通称は、なるほどと思います。
 書籍にご興味ある方は、本書をお手に取ってみてください。是非、紙の本で。