自治体法務の備忘録

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税制度と財政と(岩波新書の既刊から)

 刊行されたばかりの「日本の納税者」がおもしろかったので、同書と併せて既刊から何冊かご紹介しましょう。

日本の納税者 (岩波新書)

日本の納税者 (岩波新書)

 「納税の義務」が大日本帝国憲法で制定された経緯においては「兵役の義務」と併記されていたとは、知りませんでした。

金で払う義務が税で、血で払う義務が兵役だったということになる。「血税」は今日一般に誤解されているような「血と汗と涙の結晶をを払うもの」ではなく、兵役のことを意味している。
(15ページ)

 本書では、戦後、新憲法の策定時における「納税の義務」の取扱いに関する議論から紐解き、なお国が「課す」ものとして取り扱われてきたわが国の税制度について説明されています。

 そもそも大学法学部では、税不が法律であるという認識すらなかった。一般の法学研究者からすると、税法はしょせん税額計算の規定にすぎず、そんなものに法的理論が含まれているとは想像できなかったのである。税金の法律問題は徐々に認識されるようになってきたが、税法や社会保障法のように大学を卒業したら誰もが関わる法律科目は相変わらず日陰者扱いがつづいてきた。
(149〜150ページ)

 タイトルは「納税者」とありますが、税法に知識がある「徴税者」であれば、より興味深く読むことができます。

 前述の「日本の納税者」の「おわりに」に本書のタイトルが出てきます。
 国税庁にお勤めになられた著者が、現状の税制度に関する懸念を解説しており、税制度、社会保障制度、行政改革、グローバル・エコノミーなど多様な視点が興味深くあります。
日本財政 転換の指針 (岩波新書)

日本財政 転換の指針 (岩波新書)

は、わが国の今後の社会保障制度と税制について考えさせられる指摘。複数の方に「良い本だから、絶対読め」と言われて手に取り、期待に違わなかった本。
 拙blogでの過去の紹介はこちら→http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20130505/p1
「分かち合い」の経済学 (岩波新書)

「分かち合い」の経済学 (岩波新書)

 「日本財政 転換の指針」と併せて必読なのが本書。神野先生は、現物給付(サービスの提供)への転換が福祉施策の充実に寄与するものと指摘されます。
 そのためには、住民に「より近い」地方制度の役割に期待されるところが小さくないとのことで、自治の現場にいる立場として励まされます。