自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

続・全国900近くの自治体「借金返済資金」別費用に

 昨日書いた記事(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20150714/p2)について、「なんちゃって市の財政担当」さんからコメントいただきました。

問題意識としては、満期一括償還方式なのに、減債基金を積み立てていない場合などを指摘したいのでしょう。
でも、返済資金は何かあるはずですよね。

 そっかー、満期一括償還か。元利均等払で公的資金(財政融資など)から資金調達をしている田舎の小さな自治体としては思い至りませんでした。だとすれば、先日の紹介記事は、やっぱり説明不足だよねえ。
 記事にお名前がある赤井伸郎教授(大阪大学)が作成された資料をネットで拝見しました。
臨時財政対策債の構造と膨張の実態】http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/3841/PPT10-2.pdf
 ざっくりいうと、

  • 地方交付税でもらっているほど、公債費として償還してないよね。
  • というのは、理論値で計算される基準財政需要額と実際の償還に乖離があるからだ。
  • 特に、満期一括償還である起債については、自治体にその認識あるのかな?
  • だったら、基準財政需要額で公債費として計算される額と実際の償還費の差額を減債基金として積んどくべきじゃね?

といったところでしょうか。
 もちろん、長期を見据えた財政運営の必要性について理解しますし、減債基金の適切な運用については同意するところです。
 ただ、基準財政需要額としての算出上の数値に関し、その目的への厳密な支出を要請するということであれば、ことは公債費だけでなく、衛生費や教育費など他の費用についても同様の要請を求めることになるのではないか、と思ったり。であれば、それは、やはり一般財源である交付税の趣旨にそぐわないのではないか。
 また、満期一括償還時における償還費用についても、その時点で「当該償還に係る起債の前後の時期に発行された起債に対し理論値として積み上げられた償還金相当分」の交付税が公債費財源としてあるわけで、資金不足が極端に生じるわけではないはずです。
 もっとも、制度としての臨時財政対策債がいつまで存続するかわからず、ある年度を境に臨時財政対策債がなくなれば、これに基づく理論上の償還金相当分の交付税もあてにできなくなります。その後にドカドカと一括償還を迎えるなると、確かに苦しい事態になることが考えられます。
 理論値の乖離と不足分への対処については、それぞれの自治体において、財政運営上の必要な検討が行われるべきではありましょう。ただ、その対処については、「近く迫る償還の額に対して減債基金をどのように計画的に準備していくか」という政策的判断であって、単純に基準財政需要額と償還額との差額を「積んでいく」意図にはならないのではないかと思います。
 責められるべきは臨時財政対策債という国の制度であって、しわ寄せが来ている自治体の運用について言われてもなあ、と説明が不十分な報道とも相まって戸惑いを覚えるところです。