自治体法務の備忘録

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いちばんやさしい 地方議会の本

 学陽書房からの新刊です。
 「ギウン」「サイケツ」「イチジフサイギ」…、議会については専門的な言葉が飛び交い、慣れないうちは困惑される方も多いと思います。
 とはいえ、人事異動で立場が変われば、現行の自治制度で二元代表制の一翼を担う議会への対応を避けられないこともあるでしょう。
 本書では、「議会は何のためにあるのか」に始まり、議員の身分や議会の構成・権限、運営方法(本会議や委員会での進行など)、議会改革についてまで解説されています。
 地方分権の推進により、地方議会の責任と役割は大きくなっていますが、従来の参考書では、議会改革に重きが置かれ、入門書的なわかりやすい内容のものはあまりなかったような気がします。
 ただ、最近では、実務者による研究会も盛んになってきており、本書の刊行元である学陽書房からも良い解説書が続けて刊行されています。各自治体議会で議会基本条例の制定も進んでおり、様々な事例が蓄積されされていることも背景にあるのでしょう。
 本書の著者は、
自治体の議会事務局職員になったら読む本

自治体の議会事務局職員になったら読む本

の著者の1人であり*1、議会事務局実務研究会の会員でいらっしゃいます。
 議会には事実上の運用やローカルルールが少なくありません。本書では、著者のご研究とご経験から、法律についてだけでなく、実務についての詳しい解説が参考になります。自治体議会の現状をわかりやすい言葉で説明するだけでなく、それを踏まえて目指すべき指針が示されています。

 議会運営がこうした先例や申し合わせによって進められることについては、「先例主義」あるいは「前例踏襲」などと、しばしば批判的にとらえられることがあります。
(略)
問題は、現実に合わないにもかかわらず、古いしきたりや昔の決め事に漫然と従うことにあるわけで、それを避けるためには、現状に合わない先例は廃棄し、申し合わせは「改正」すればよいのです。
(133頁)

 議会に関するトリビアも豊富で、イギリス議会の裁決方法なんて初めて知りましたよ。*2
 議会事務局に赴任されたばかりの方や、執行機関で議会対応をされる方のほか、住民の皆さまにも広くニーズがあるものと思います。

*1:事務局職員に向けた本ですが、執行部の職員にもおススメ

*2:「賛成」「反対」の発声による表決。どちらが多いか判断できないときは、議場に出て人数をカウントする。