ビブリオバトル再現「超合法建築」(彰国社)
ご紹介させていただくのは、「超合法建築図鑑」です。
今日、犬山の城下町を歩いて感じきましたのは、当時の為政者の考えた「まちづくり」と、現在の犬山市の方々が考えた「まちづくり」が相まって、非常に魅力的な「まち」になっているということでした。
調和の取れた「まちづくり」を目的とする都市計画法と、具体的に個別の建築物について対応する建築基準法という法律があります。
この本、法律の本じゃありません。本屋さんに行くと、建築関係の本棚にあるんですが、気になるのが「超合法」ってタイトルですね。「違法」じゃない、「合法」なんだよと。
建築行政は、規制行政ですね。規制行政は、法律で「ストライクゾーン」を明確にします。ワールド・ベースボール・クラシックでも派手な投げ合いがありましたけれど。
ということは、ストライクゾーンのギリギリを狙って投げる球もあるということですね。
この本で紹介される中で「キリン・ビル」というのがあります。「キリン・ビール」じゃない、「キリン・ビル」。キリンの首のように、ヒューっと細い躯体の上に、ちょっと大きな最上階が乗っかっている。展望台じゃない。この建物、マンションなんです。
なぜ、こんな形になったかというと、日影規制があるからというんですね。
高い建物の高い影は、お日様の動きによって早く動く。でも、低い影はなかなか動かない。要するに、建物の容積が同じであるならば、容積を高層部に振り分けた方が近隣への影響は小さくなるそうです。
何が言いたいかというと、「日影から計算されるデザインがある」ということなんですね。
他にも町中を歩いていると、マッターホルンのようにナイフで切り落とされたような建物を見ることがありますけれど、なんでそんなデザインになったかを、この本では紹介しています。
この本、「地下室マンション」についても、紹介されています。
「地下室マンション」を大学の授業で紹介したしたとき、学生に「地下室で洗濯物が乾くのかな?」と聞かれたんですね。
地下室とはいっても、地面に埋もれているわけではない。斜面の上に建設された、数階部分だけが階数としてカウントされるんですね。
この本では、「階段マンション」と紹介されています。斜面地に階段状にマンションを建設することで、高さ制限をクリアするとともに、斜面に建設された部分を地下室扱いして、容積率に算入されない。「超合法」ってやつですよ。
じゃあ、合法ならよいのか。「超合法」を許容するのかという問題ですね。住宅街に巨大建築物が突如出現したわけですから、周囲への圧迫感は大きい。
これを条例で規制したのが、神奈川県でいえば、横浜市や横須賀市などです。 このように「ストライクゾーン」が明確にされる中で、事業者さんも、役所も、「ストライクゾーン」に投げ込むというのが、現状の法律の解釈と自治体の運用としてあるんだなあ、ということです。まさしく、「超合法」の言葉の中には政策法務の意味も、込められるのではないかと思います。
私、建築行政の詳しいことはわからないんですけれど、絵を見ているだけでも楽しい本ですので、ご興味ある方は、図書館や本屋さんで手に取っていただけたらと思います。
ありがとうございました。