自治体法務の備忘録

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集積所のゴミの所有権

 集積所のゴミについて、市の所有権を主張した上で罰則を禁止する法設計について、tihoujitiさんがコメントされています。

 しかし何で「所有権帰属型」を採用するのだろう。単に、適切なリサイクルの実施という観点から無秩序な持ち去り行為を禁止すればいいのではないだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20070304#p2

 所有権は一方的な宣言によって認められるものではない、という趣旨は、私も過去に書いたことがあります。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050512/p1
 私が前述の記事を書いたころは、罰金等の罰則規定が無く、所有権の主張のみで窃盗罪に引っ掛ける、という、ちょっと無茶な法設計が見受けられたものでした。最近は、ご指摘のとおり条例に罰則規定を設ける法設計が主流のようで誠に喜ばしいところです。
 罰則規定の根拠について、tihoujitiさんは「所有権帰属型」とご指摘されていますが、例えば横浜市条例では

(目的)
第1条 この条例は、市民の健康で文化的な生活を確保するためには、資源を循環利用し、かつ、廃棄物の発生を限りなく抑制する社会の実現を目指して総合的な廃棄物対策を的確に実施する必要があることにかんがみ、これに対応するため、横浜市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、減量化、資源化、廃棄物の適正処理及び地域の清潔の保持を推進するために必要な事項を定めることにより、資源の有効な利用、快適な生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図り、もって良好な都市環境の形成に寄与することを目的とする。

として概念的に広く規定されている「目的」が罰則の根拠であって、「所有権の侵害」に止まるものではないのではないかな、という気がします。
 とはいえ、ご指摘のとおり、また前述の私の記事のとおり、所有権の一方的な宣言があまり妥当であるものとは思えませんね。
 いずれにせよ、前述の記事にも私自身が書いていますが、私が言いたいのは、つまりこういうことです。

 「資源ゴミな、あれ、持ってかれたらもったいないだろ。どっかの自治体で所有権を主張した条例あったな。あれと同じの、うちの自治体にも作れ」「じゃあ、同じ内容で制定しますね」という発想にとどまる限りは、政策法務論として正しいものではないですよね。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050512/p1

 資源ゴミを巡る問題にとどまらず、予想される効果とそのための手法を模索した上で、理屈を説明できなければいけないわけであって、先行自治体の例に倣った条例をそのまま作るのが政策法務ではありません。