給付行政と不服申立前置
上記の「高校無償化法案」ですが、おもしろいのが「不服申立前置」が、さらっと書いてあること。
(不服申立てと訴訟との関係)
第十六条 就学支援金の支給に関する処分又は第十一条第一項(第十四条第一項及び第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による徴収金に関する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決又は当該処分についての異議申立てに対する決定を経た後でなければ、提起することができない。
ご承知のとおり、「行政処分」の救済手段には、司法に解決を求める「行政訴訟」のほかに行政に解決を求める「不服申立て」があります。
「行政訴訟」と「不服申立て」の関係について、衆議院法制局OBの吉田利宏氏は以下のように端的に説明されています。
原則として、裁判所への提訴と不服申立ては、どちらでも好きな方を選択することができます。公平な結果を期待できる「うまい」(裁判所)を選ぶのか、「早い、安い」(不服申立て)を選ぶのかは、あなた次第というわけです。
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いやまあ、なんてわかりやすい。
さて、「不服申立前置」とは上記の例外で、提訴に当たっては、それに先だって不服申立てを義務づけるもの。税金の賦課など、大量の行政処分に関するものについて、個別法で特例として定められているものです。
私が興味をひかれたのは、給付行政については、少なからず自治体でも条例制定事項であるところ、少なくとも「不服申立前置」とする発想は浮かばないという点です。
条例の守備範囲を論ずる際に、少なくとも「司法」への関与は否定されるのではないか、と以前に拙blogでも記述したことがあります。
法に対する積極的な条例制定論をもとより否定するつもりはありませんが、相手が独立性を保証された司法ではいささか躊躇せざるを得ません。その役割は、国権の最高機関である国会=立法府に期待されているのではないかと思うところ。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20090121
逆に言えば、国法であれば躊躇なく(いや、あったかもしれませんが)、司法への関与について記述ができてしまうのね、と発見の感。
それにしても、このたびの法案で、行政処分に対する救済に関し例外的な取扱いである「不服申立前置」の採用は、そもそも合理的な制度設計なのでしょうか。