自治体法務の備忘録

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Re:条例はどこまで・番外

 「法学セミナー」に掲載の拙稿について(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20110214/p2)、半鐘さんが取り上げてくださいました。感謝。

法学セミナー3月号は、『「ユニーク条例」の法的「適格性」と自治体議会』。
前回とのセッションになっているのは、いいですね。今後も期待します。
さて、この号の締めは、このような言葉でありました。

「朝ごはん条例」の10年後には、果たしてどのような「ユニーク条例」が姿を現すか、私たちは期待とともに注視していく必要があります。

これについて、思うことを少々。
http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-438.html

 上記の文章で半鐘さんは、行き過ぎた「ユニーク条例」が「法を上回る形で」制定されてしまう場合について懸念を示されています。

そこで心配なのは、実際にそのような条例が現れてしまったとき、反動(反省)として、条例制定権の縮小に動かないか、ということです。
「そんな勝手な条例をつくるようなら、もうつくらせないよ?」

 政策に比重を置いた立法については、「自治体法務NAVI」誌最新号(vol.38)に掲載された鈴木秀洋氏(東京都文京区)の論文に厳しい指摘があります。*1

 政策創造のための道具・手段としての法の役割を強調し、どんどん地域独自の法律解釈をしましょう、条例をつくりましょうという議論は、何のための政策かを見誤らせ、

  1. 条例制定数を競い合うこととなったり、
  2. 立法事実を十分に踏まえない新しい政策を机上でつくったり、
  3. 他の先進ユニーク条例の真似事をすること、

このような方向に向かう危険(具体的危険性)を有しているのである。
自治体における執行法務の現状と課題」第2回−行政実務にとっての法務力再考−
※引用に当たってウェブ上で見やすいよう、一部表示を加工しています。

 氏の記述は行政運営における安易な条例制定に警鐘を鳴らすものですが、その「危険性」は、首長提出条例についてだけではなく、「法学セミナー」誌掲載の拙稿で期待した、政策誘導としての議員提出条例にも当てはまるものでしょう。どうにも昨今の報道では、議会活動活性の測定に条例制定(修正)数を数える向きがあり、いささかの懸念も拭えないところです。
 個人的には、法制の運用が、その主体が議会であれ執行部であれ、住民の監視に基づいて適正に行われる制度設計こそが「地方自治の本旨」の一翼たる住民自治の期待するところなのではないかと思います。もちろん、そのあり方には議論ありましょうが。
 そうでなければ、半鐘さんがご提示の不安が現実のものともなりかねないのではないか。
 方向性が見えない自問自答に嘆息の日々です。

*1:同論文で、鈴木氏は「政策の重要性を強調しつつ、法治主義の実質化を模索することで政策法務論を理論化する試み及び説明は、非常に難解である。」と指摘しますが、個人的にはそのようには考えません。ここで詳細に踏み込むことはしませんが、政策法務の役割として「法の欠損や齟齬、矛盾を現場の法運用が埋めていくことが現在の自治体に要請されている」と拙blogでも過去に記述したことがあります(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100918/p1)。