自治体法務の備忘録

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「財政学の扉をひらく」

有斐閣
「財政を学び、論じることは、私たちの生き方を問うことに通じるのである。」(156頁)
 書名に「扉をひらく」とあります。本書は、財政学の具体的な内容(数式で示されることも少なくありません)を学ぶ以前に知っておきたい、初歩的な知識や考え方についてわかりやすく解説しています。
 巷間で広く議論される極端な財政出動の是非や消費税の要否などのほか、地方財政の役割などその範囲は幅広い。
 欧州では、社会保険料から税に国民負担を移す動きがあるとのこと。社会保険料では所得の分配等の機能に限度があるという指摘は興味深い。
 いろいろ考えさせられる内容でありながら、読みやすいので、財政にご興味ある方はお手にとっていただけたらと思います。

「地方自治論」

 副題の「2つの自立性」とは、「地域社会」と「中央政府」にそれぞれ対する地方政府の自立性をいいます。前者としては、選挙制度や条例、行政組織など、後者としては、地方財政制度などを説明。
また、行政サービスの例として学校教育・子育て行政・高齢者福祉を挙げて、自治体における試行錯誤をすくい上げています。
 財政部門に身を置いた立場としては、「財政規律の維持」「地域間格差の是正」「地方政府の自立性」の3つの制度的理念のうち、最大で2つしか満たすことができないという指摘は興味深く思いました(169頁)。
 記述が幅広いので、興味深いトリビアも豊富です。
 単独で学校を維持することが困難な自治体も出てきた結果、県境に「高知県宿毛市愛媛県南宇和郡愛南町篠山小中学校組合立篠山小学校・同中学校」という長い名前の学校があるといいます(190頁)。
 引用文献は幅広く、論述も偏りがない。地方自治制度の幅広く確認されたい向きにおススメです。

Re:行政の終活担当窓口のかたへお願い

 何故、墓石屋が地域包括センターや社協とつながりを持とうとするのか。
 それは、施設に入りながらお墓を管理していたお客様の死亡情報を得ることができなかったからです。そして、ご自身のお墓に埋葬されることもなく、縁故者でもない墓石屋はお客様のご遺骨の行方を調べることもできませんでした。(中略)霊園使用許可書は今もお預かりしたままです。墓所には使用料が一定期間以上滞納されたときに立つ立て看板が立ちました。いずれ、無縁として改葬されることでしょう。
https://umeya400.com/ume-log/archives/4043?fbclid=IwAR0B7Dn_PbFZOzoqgfx031Bt0LHwDvMeHHN9tCxHMQTaEkBVKAeX3fB2kAs

 上記は、松戸市の「うめ家石材店」おかみさんブログからの転載です。
 うめ家石材店さんには、自治体学会でのパネリスト出演と「法学セミナー」誌の「終活」特集に寄せた拙稿の準備のためにお話しを伺いました。

 行政の終活担当窓口の方へお願いです。
 お客様が大切にしているお墓を、その人目線で話をきいて下さい。そして「お墓があるか・ないか」だけでなく、どうしたら、その人が大切にしている「お墓」に入れるか、お墓じまいの費用をどうやってねん出するか一緒に考えてください。

 「終活」の語自体は、「就活(就職活動)」「婚活(結婚活動)」の流れをくむ比較的新しい造語です。名前を与えられたことにより、従来は敬遠されがちだった「死を巡る諸問題」について、比較的取り上げられやすくなった感があります。逆に言えば、それらを取り上げざるを得なくなった現在の社会的背景が存在しているとも言えます。
 自治体の終活事業は端緒についたばかりであり、他団体との連携を含め、その実施は手探りであるのが現状です。今後の進捗については、注視が必要でしょう。

Re:「○○でやったやつ」

 半鐘さんがひさしぶりのご投稿
 お帰りなさいませ(メイド風

マイナンバーカードの発行を地方公共団体情報システム機構が行うことになったため、手数料条例の改正(再交付手数料の削除)が必要なんだそうですね。
http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-1204.html?sp

「現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術」

 

現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術

現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術

  • 作者:岡元 譲史
  • 発売日: 2021/05/21
  • メディア: 単行本
 

  著者の経験を踏まえ、滞納整理に関する心構えから具体的作業、精神的負担の多さによるストレスへのケアまでバランスよくまとめられています。

 見開きで項目が一つずつ説明されており、読みやすい構成。新規赴任者は、気になったところから読み始められます。
・短期間の「納付計画」で一日も早く滞納を解消する
・滞納者の言い分に振り回されない
はもちろんのことですが、
・傷ついた心のための回復薬を常備しよう
・滞納者が顔見知りだったらどうすればいい?
など、厳しい環境の読者に著者は寄り添います。

 コラムで紹介された、著者のお子さんが小学校でお父さんの仕事を先生に誇らしげに語ったというエピソードには、胸が熱くなります。

橋本博之先生・連載「行政法を学ぶ」 第3回

 弘文堂のウェブサイト「弘文堂」スクエアに標記の連載の第3回が掲載されました。

 第2回では、処分性の基礎について整理しました。今回は、その応用編として、処分性が論点となった平成23年度予備試験問題を取り上げてみましょう。
https://gyoseihou.hatenablog.com/entry/2021/05/14

 本件は、自治体の独自条例に基づくモーテル類似旅館の建築不同意が取り上げられています。
 図表が豊富でわかりやすい説明なので、ぜひご覧ください。

「一発OK!誰もが納得! 公務員の伝わる文章術」

一発OK! 誰もが納得! 公務員の伝わる文章教室

一発OK! 誰もが納得! 公務員の伝わる文章教室

 若い職員の皆さんに「伝わる文章」の書き方をどう伝えるか。私自身も悩んでいたところです。
 本書は、見開きで修正前後の文例を挙げて、何がポイントかを説明しています。文例も役所の仕事に関するものなので、イメージがわきやすい。
かの山本五十六の名言は、「やってみせ、言って聞かせて」とありました。その実践と言ってよいでしょう。
 上記の名言は「させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」と続きます。管理職の皆さんも本書を読んで、部下への指導に役立てていただけたらと思います。