自治体法務の備忘録

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続々・遡及適用の可否

 何回か改正漏れへの対処に係る「遡及適用」の可否について掲載させていただいていますが、11月4日公布の省令について、しやくしょ法務さんが興味深い内容を取り上げらられていました。勉強になるなあ。

【庇を貸して母屋を取られそう…】
この共同命令、おそらくこの時期としての改正の趣旨は、公益法人制度改革によって、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)が制定され、民法が改正されることに伴って、第4条第4号の規定中の文言「民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された社団法人」を「一般社団法人」に変更したいというものでしょう。でも、同条第2号及び第3号の規定中に会社法(平成17年法律第86号)と会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)のときにやらなきゃいけなかった「有限会社」の削除などの規定の整備が残っていたので、あわせて改正しようとしたところ、改正するの忘れていた第2号及び第3号の分の改正ほうが、ちゃんとやろうとして準備した第4号の分の改正より量的に多くなってしまっています( . .)
※強調はkei-zuによる。
http://tkys.txt-nifty.com/blog/2008/11/post-6920.html

 公布された省令は、しやくしょ法務さんによるご引用でご確認にいただけるとおり、改正漏れに対する部分について「公布の日から施行する。」とされており、「遡及適用」に関する事項の記載はありません。
 この点、先般、拙blogで書かせていただいたとおりでしょうね。

【遡及適用の可否】
 遡及適用の可否は、改正漏れという形式的な問題の対処ではなく、やはり、その実質的な影響によって判断されるべきでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20081019/p3

 まあ、今さら「遡及適用」出来ないよね、といったところでは、もちろんありますが。

【続・遡及適用の可否】
対処の遅れが数か月の場合であればまだしも、数年が経過したような場合においては、「追認」的な取扱いに際して「遡及して適用する。」と書くのは、やはり、なかなか難しかろうと個人的には思うところです。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20081106/p1

Re:応募者なし

 成田市が募集を開始した運動公園のネーミングライツに対する応募がない旨の報道(http://mainichi.jp/area/chiba/news/20081108ddlk12010140000c.html)について、tihoujitiさんが掲載されていました。

 ネーミングライツを得る価値がある施設であるか否かという基準は、景気も大きな要素でしょうが、やはりその施設の位置づけであろうと思われます。
 つまり、施設が、どのように、どれだけ用いられるか、ではないかと。
 やはり、利用者数の多さは当然のことながら、プロ野球やJリーグなどのホームグラウンドであることや、なんらか競技の国際大会の場であることなど、メディアへの露出度などもかなり関係するのでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20081108/p2

 ご指摘のとおりだと思います。こんなところにも地域間格差はありそうだな。
 さて、ネーミングライツの先行事例として世間の耳目を集めた横浜市の取組みがまとめられものとして以下の書籍があります。

財源は自ら稼ぐ!―横浜市広告事業のチャレンジ

財源は自ら稼ぐ!―横浜市広告事業のチャレンジ

 広告事業の実施に当たり、お付き合いでお願いできるだろうと企業を回ったところ、事業の実施が企業側にとってどの程度メリットがあるのかを問われ、返答に窮した旨のご経験の記述がとても興味深いものでした。公権力の行為主体としてではなく事業(ビジネス)の実施主体として対等の立場で「営業」を実施するに際して、役所の説明能力の乏しさが図らずも現れてしまったということでしょうか。
 もちろん、上記の失敗を踏まえた上での事業の積極的な展開が同書で読み応えのある部分ですので、ご興味を持たれた方はお手に取っていただけたらと思います。
 営利企業にとって、施設のネーミングライツのメリットが認められなければ、募集に応じがたいのは想像に難くありません。
 とはいえ、逆に言えば、だからこそ、自治体において、施設の潜在的な存在価値を発揮する運用が要請されている事態でもあると言えるのではないでしょうか。