自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

例規の名称と公表の方法

 nationfreeさんがご掲載の記事から

条例、規則は、題名と法形式が一致している。
しかし、訓令と告示は、そうではない。
題名が『当直規程』であっても、『○○事務取扱要領』であっても、法形式は、訓令。
題名が『○○事業実施要綱』であっても、法形式は、告示。
http://d.hatena.ne.jp/nationfree/20070122#p1

 nationfreeさんがご指摘のとおり、「要綱」という名称の取扱いは非常に曖昧でして、私は人に聞かれて「名称が『要綱』だろうが、『要領』だろうが、『取扱規程』『事務指針』『マニュアル』『手引き』『ガイド』『虎の巻』のいずれであろうが、基本的には『法的な効力』に影響はないんですよ」と答えたことがあります。一方で「告示」は、対外的な「形式」であって、「条例」「規則」のように、そこに掲載される内容を限定するものではない。
 とはいえ、その運用に当たって明確な線引きを行おうとする試みはあるわけで、以前にご紹介したように(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20061106/p2)、大和市では例規等に関する整備指針を設けています。

要綱の形式によるものは、次のものに限ることとする。
①条例の整備方針Ⅱの任意的条例事項に該当する場合であっても、新たに行う事業の初期段階として試行的に行う場合(3年を目途とする。)
②個別的事業(イベント的なもの)の実施について定めるもの
③市民がメンバー(非常勤特別職にするものは除く。)に入っている組織の設置について定めているもの。
補助金交付金、利子補給、物品給付等市民への助成施策の細目を定めているもの(金銭で支出する場合の歳出科目は19節に限る。)
⑤法令を補完する緊急の行政需要的対応が必要な場合であると判断されるもの
※要綱は、告示を行うものとする。

 なるほどね、なのですが、基本的に「要綱」は内部取扱いに関するものであるわけで、その形式を例規に準じた規程形式とした上で、住民への周知のために「告示」を行うとしても、この場合の「告示」は、法規範の一部と言うよりは、「公表の手段」で有るのであろうな、と思うところです。
 なお、国においては、補助金の取扱いなどについての規程(というより「ルール」と言いましょうか)を「告示」という形式では公にしていない。今、手元に資料がないのですが、自治体においても「規程形式の告示は行わない」としているところもあります。洋々亭さんのところの掲示板で、監査委員など自治法において規則制定権を認められていない機関においても法令の定めるところによらず所掌事務に係る内規を定められる旨の指摘が有りましたが(http://www.hi-ho.ne.jp/cgi-bin/user/tomita/yybbs.cgi?subno=2779)、このような内規を公にするに当たっては「告示」という形式をとっている自治体が多いようです。この場合も「公表の手段」としての「告示」の取扱いであるのでしょう。
 ちょっと脱線しちゃうと、この「公表」という性格の「告示」の概念を広く捉えてか、条例・規則の公布の際に、「告示第○号」と頭書を加える自治体も見受けられます。その自治体における慣例的なものでありましょうから、間違いだとまでは言いませんが、まあ、あまり一般的ではないです。
 さて、いろいろ書きましたが、上記の宇治市のような明確な取扱いを定めることは、自治体において対外的にその規程の性格を明らかにしようという試みであるわけで、もとよりそれを否定するわけではありません。為念。