執筆のためのささやかな心構え(kei-zu風)
文章の書き方は人それぞれで、誰もが共有できる明確な「お作法」はないとは思います。
とはいえ、Twitterで文章の書き方に触れた際にちょっと反応があったこともありまして、私ごときがとは思いますが、何冊か本を書かせていただいた経験を踏まえて、まとめて書いておきましょう。
【構成について】
・全体の構成は、4つにわける。
起承転結にこだわるわけではないですが、4つのハコをイメージし、それぞれを埋めていくことを考えていくと、構成の不安が減ります。
2つ目のハコ、3つ目のハコがあふれがちなのですが、分量が増えたハコは2つに分ければよい。その場合でも、「この2つのハコは1セット」と意識しておくと全体が見通せて、構成の迷子にならないで済みます。
・執筆に手が付きにくいときは、第3章から書く。
「書きたい」動機が現れる箇所は、結論に向かう部分であるはずです。起承転結でいえば、「転」の部分。私自身、「とはいえ」「こうしてみると」という書き出しで第3章に書かれるべき内容から執筆を始めることがあります。
また、結論に向けた記述から帰納的に第1章と第2章を書くと、結果的に無駄な時間を割かなくて済みます。
映画「スターウォーズ」でも、映画第1作は「エピソード4」だったでしょ。「書きたい」ところから執筆を始めることは、モチベーションの維持にも繋がります。
・書き終わったら、書き出しを半分に削る。
書き出しの分量は、だいたい不要に長くなっています。
これは、執筆のエンジンがかかるまでに時間がかかることにもよるのでしょう。例えて言うと、慣れない方の文章には、美術館の訪問記録なのに電車に乗っているところから始まっているような記述が少なくありません。
また、読み返してみると、書き出しにも記述がある結論めいた内容は、後段にもしっかり書いてあったりします。そのような場合は、書き出しにある記述の要不要を検討します。
・110パーセントの分量を書いて、90パーセントの分量に減らし、100パーセントの分量に「のばす」(例示の分量は、厳密なものではありません)。
「詰め込み」や「書き急ぎ」の印象があると、読みにくさの原因になりかねません。
後述の「繰り返し書き」や、本論からそれた記述を削り(「もったいない」は禁句!)、文章の流れを調整し、言葉の不足を補います。
【文章の書き方について】
・接続詞は、できるだけ使わない。
「だから」「したがって」などの接続詞は、文章の勢いをそぐ場合があります。逆に言えば、接続詞を省いても読む苦労を感じさせない文章を目指しましょう。
接続詞を制限することにより、文脈が反転する場合の「だが」などが効果的に機能します。
・同じことを何度も繰り返して書いていないか確認する。
執筆者が重要だと思っていることは、無意識に何度も記述していることがあります。段落を変えて違う言い回しで繰り返していることも少なくありません。
パラグラフごとに「何が書かれているか」を意識しながら執筆すると、不要な繰り返しが防げます。
また、文章の書き出しと第3章のまとめぐらいで、同じフレーズを書きがちで危ない。
【執筆の姿勢について】
・「もったいない」と思わない。
余計な枝葉は、執筆分量の支障になるだけでなく、一貫した論調の構成にも悪い影響を与えることが少なくありません。
「書かないこと」は、「書くこと」と同様に重要です。
調べたことは全部書きたいというお気持ちもあるかもしれませんが、「もったいない」は禁句です。
・執筆の立ち位置は、「私」ではなく「あなた」
これは読む立場での私の感想なのですが、「俺が俺が」で書かれた文章では、「そりゃ、あなたでしたらね」と思われておしまいです。
特定の読者(想像であってもよい)を想定すると、内容の方向性が固まるとともに、迂闊な「わたし語り」になりません。
・読んだ人間が不快になる文章を書かない。
読む人間の「共感」がないと、文意が伝わりません。
【執筆の環境などについて】
・執筆の負担にならない環境を用意する。
過去の著作ではポメラを活用しました。開いた途端に執筆の体制が整うので、電車に乗っている間でも重宝しました。
・執筆のための場所を用意する。
行き詰ったときは、喫茶店が重宝します。コメダ珈琲なら、長居がそれほど負担になりません。
以前にお付き合いのあったブロガーさんは、帰宅途中の喫茶店が更新のための場所だとおっしゃっていました。
このほかにも執筆者なりの心がけや環境整備があることと思います。
ささやかな記述ですが、皆さまのご参考になれば幸いです。
「民主主義のための社会保障」香取照幸(東洋経済新報社)
「元法制局キャリアが教える 民法を読む技術・学ぶ技術」吉田利宏(ダイヤモンド社)
Live! 政策法務 in Kochi
去る10月5日、高知県自治会館に研修講師としてお邪魔しました。高知県人づくり広域連合さんの主催で、担当は政策法務です。
先月までは、集合研修の実施も危ぶまれましたが、無事に開催されて何より。私にとっても、1年半ぶりの出張研修講師でした。
参加者の皆様の熱心な姿勢が当方の刺激にもなります。
「地域課題の解決のために自治体が独自条例を作っていたところに、後追いで国が法律を作った場合、それまでの条例の一部が法に抵触するときは、どのように対処すればよいのですか?」
うん、よい質問。
自治法14条の説明と空き家条例の事例を紹介して、国の立法施策の在り方にも関係があるんだよねと、刊行されたばかりの礒崎初仁先生の「立法分権のすすめ ―地域の実情に即した課題解決へ」(ぎょうせい)を紹介しました。
スタッフの皆さま、ありがとうございました。
「立法分権のすすめ ―地域の実情に即した課題解決へ」礒崎初仁(ぎょうせい)
条例の制定は「法律の範囲内で」と限定されますが、地域の課題解決のために、その限界についてはこれまで解釈が重ねられて来ました。
本書では、これまでの分権改革を振り返り、今後の立法による分権の必要性が論じられています。
ここで「立法」とは、自治体の条例のみならず、その効果的な運用を見据えた法律の見直しも含まれます。
各分野の法令について、章を一つ使っての「規律の細かさ」に関する検討は読みでがあります。
分析を踏まえ、立法分権をどう進めるか、それを妨げるものは何か、議員・職員は何ができるか、にそれぞれ1章を充てて分析がされています。
そして最後の章では、「新型コロナウイルス対策に立法分権は有効か」と題して、喫緊の難局を題材としての検討。
自治立法論の最前線。勉強させていただきました(^-^)
『公務員の「強み」の活かし方』
1「行動・事実」 2「感情・想い」 3「思考・理解」
それぞれへの適否について分析すると、私自身は、1△、2✕、3〇、でしょうか。
人は、意外と自らの「強み」を認識していないそうです。なぜなら「うまくできたとき」は、改めて認識がないからとのこと。
逆に言えば、自分の得意パターンを意識して見つけることは、仕事や人間関係において非常に役に立つということになります。
異動が多いのは公務員の常ですが、具体的な知識・技術ではない、抽象的な「強み」はどこに行っても応用が利く。
また、自らの「強み」が見えれば、他人の「強み」も見えてきます。であれば、どのように協力を行っていくか。
そして最後は、リーダー論。励まされる内容です。