太平洋の嵐

太平洋の嵐 [DVD]

　東宝の戦争映画の決定版。冒頭、真珠湾に出撃する空母飛竜の甲板を追う移動撮影は目を見張る。「男たち大和/YAMATO」の実物大甲板で、「零戦燃ゆ」の零戦に驚いたが、本作は実物大の空母甲板に零戦が並んでいるんですよ。また、「連合艦隊」の全長１３メートルの大和にも驚いたが、本作の飛竜のミニチュアは全長１５メートル。それを浮かべるために作った特撮用プールが１万平方メートル。すげえ。特撮シーンは、この後の東宝作品に必ず使用されるばかりか、米映画「ミッドウェイ」でまるまる使用される完成度の高さ。
　物語は、意気軒昂な飛行機乗りの主人公が、ミッドウェイの敗退で虚無的になっていく経過を描く。ラストは主人公が国民へミッドウェイ敗退の真相漏洩防止のため帰る見込みのない南方戦線へ赴任するところで幕を閉じるが、戦後１５年の制作当時の戦争の記憶が濃い時代においては、主人公のその後を作劇する必要もなく、その後の運命を悟らせたのだろうなと感無量。