社会保障の充実と消費税増税
このたびの消費税増税は社会保障の充実が目的の一つであるわけなのですが、法制執務的にそれがどのようにビルドインされているか、ちょっとだけご説明しましょう。
国民年金の受給資格には、所要の制度加入期間が定めらていますが、従来は25年であった期間が来年10月以降は10年とされる予定でした。「予定でした」と書いたのは、消費税の増税とリンクしていたからです。
【国民年金法】
(支給要件)
第二十六条 老齢基礎年金は、保険料納付済期間又は保険料免除期間(第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るものを除く。)を有する者が六十五歳に達したときに、その者に支給する。ただし、その者の保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が二十五年に満たないときは、この限りでない。【公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(抜粋)】
第二条 国民年金法の一部を次のように改正する。
第二十六条ただし書中「二十五年」を「十年」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(各号略)
ここで、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」を確認すると以下のように記述があります。
附 則(平成二四年八月二二日法律第六八号)
(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十六年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第一条及び第七条の規定並びに附則第十八条、第二十条及び第二十一条の規定 公布の日
二 第三条の規定並びに附則第十五条及び第十六条の規定 平成二十七年十月一日
報道で「景気条項による見直し」とは言われますが、法律上「10%」のスタートは明記されており、その日付は関係法律ともリンクされているわけです。
「景気条項」についても確認しましょう。
(消費税率の引上げに当たっての措置)
第十八条 (略)
2 (略)
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
第3項末尾にある「その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」との少々いかめしい記述は、具体的には法律の制定を意味します。その具体的な手段が「平成27年10月1日」を改正するのか、特別法を別に制定するのかは技術的な選択になろうかと思います。
なお、上記の記述は、法制執務に関する技術的な解説であり、特定の政策に関する是非を指摘するものではありません。為念。