kei-zuの文章講座(というほどの内容ではないのですが)
手品師は、タネを明かしてはいけないそうです。
まあ、私は少々の手先の器用さこそあれ手品師には至りませんし、少々手の内をお見せしてもよいでしょう。
今回は、先日ご案内した「ジチタイワークス」に掲載した拙稿の舞台裏をご案内いたしましょう。
「【相談室】法律の勉強、効率よく行う方法はありますか?」(https://kei-zu.hatenablog.com/entry/20201225/1608903188)
リンク先の記事をご覧になりながら、本記事を読んでいただけたらと思います。
1 構成について
【全体の構成は4部構成とする】
本稿は、以下の4部構成となっています。
実のところ、全体を4部構成にすると、アウトラインが定まりやすい。原稿を書き始める際は、仮にでも4部構成として書き始めるのが良いです。
書き始めて、分量がある程度大きくなれば、適宜、構成の分割を行えばよい。ただし、構成を分割して項目数が6つ7つになっても、構成を散漫にしないために、それらは大きく4部構成の範囲内であるよう意識しておきましょう。
【各項目に書かれていること】
さて、4部構成といえば「起承転結」ですが、「転」に当たる3つ目の項目で大きく「転換」を望む必要はありません。本稿では、お題の「法律を勉強するコツ」がここに書かれています。
「お題を最初から書けばいいじゃない」そう思われるかもしれませんね。ただ、本稿では、冒頭に「法律がわかりません…」と題した「イントロダクション」を置いています。
その理由は、読者に「読む心構え」を持ってもらうために本稿の目的を提示するとともに、法律という堅苦しい題材に読者を引き込むために「あるある」のネタ振りを少々あざとく行っているわけです。
「イントロダクション」と「本稿のお題」の間には、「「法令」「例規」って何だ?」と題した一文を掲載しています。これは、「本稿のお題」を説明する前に、最低限の法律の説明を行いたかった意図によります。
実は、法令と例規の説明に割いた説明の部分がちょっと長い。バランス的にはもっと短い方が良いとは思いました。しかしながら、法令・例規の関係について分かりやすい説明を見る機会は少ないのではないかとの思いから、ちょっと丁寧に筆致を残しています。
2「お題」の内容について
【アバンタイトルでお題の「チラ見せ」】
本稿では、4部構成の前に、質問に対して「日頃の仕事で、以下について心がけてみましょう。」と端的な回答を置いています。映画でタイトルが出る前に、ちょっとしたアクションがあることがあるでしょう。あれを「アバンタイトル」といいます。
本稿でアバンタイトルを置いているのは、前述のとおり、本題に入るまでの文章にある程度の分量を割いたことから、読者の興味が分散しないよう、お題の「チラ見せ」をおこなっているのです。
ここで、アバンタイトルで列記された内容が3つであることに注意してください。
【お題の内容は3つにまとめる】
人に物事を説明する際は、「3つあります」と数を提示するのがよいと言われます。聞く人間に心構えをさせることにより、内容が頭に入りやすくするわけです。2つでは少ないし、4つでは聞いているうちに理解が散漫になってしまう。内容にもよりますが、可能であれば、2つになりそうであれば分割して、4つになりそうであれば関連するものに押し込んで3つにしてしまうのがよい。
3まとめと補足について
【まとめで「回収」を】
本稿の最後は、イントロダクションで提示した「謎かけ」の回収を行っています。構成を円環のように閉じると、読み手の脳裏に内容がうっすらとでも確認されるためか文章がまとまってみえます。
円環で構成を閉じた後は、改めて本稿の読者にエールを送る形で文章を締めくくっています。このように構成すると、読了後の読み手に内容の印象が残ります。
【参考書とサイトの紹介】
最後におまけとして参考書とサイトの紹介を行っています。スティーブ・ジョブスの「one more thing!」ではありませんが、「tips」のような適度な補足があると読者に「お得感」が残ります。
4執筆に際してのコツ
【書きやすいところから書き始める】
最後に、執筆に際してのコツをお教えしましょう。
4部構成のうち、冒頭から書き始める必要はありません。3つ目の項目は、タイ焼きであればアンコの部分です。筆が重たい方は、ここから書き出すとよい。また、3つ目の項目から書き出すと、1つ目と2つ目の項目を後から書くことになるので、これらの項目で提示した内容について、その後の記述で投げっぱなしになる危険性が減ります。
本稿で言えば、3つ目の項目である「法律を勉強するコツ」の内容をあらかた想定してから、冒頭を書き始めています。
【書き出しをダイエットする】
書き出しは冗長になりやすいので、読み返して半分の量にするつもりでカットできる部分を探しましょう。
本稿でも、最初に書いた原稿から書き出しを大幅にカットしています。
【パラグラフリーディングを意識する】
「パラグラフリーディング」とは、主に英文でパラグラフ(段落)の要点を掴みながら読んでいく読解法です。
本稿はウェブ記事なので、特に「読みやすい」ことを念頭に置いて記述しています。その際、段落ごとに要点を埋め込むとともに、それぞれの段落に埋め込まれた要点が重複しないよう注意を払っています。
いかがでしょうか。わずか2000字ちょっと文章でも、その構成にはそれなりの必然性があります。私なりの経験則ですが、読者の参考になれば幸いです。
もっとも、文章に「正解」はありません。「こんな方法もあるのだな」ぐらいに考えていただけたらと思います。
ところで、本記事も構成が4つに分けられていることにお気づきになりました?
自治体のお仕事モヤモヤ相談室 第1回
Web版のジチタイワークス「自治体のお仕事モヤモヤ相談室」に、拙稿が掲載されました。
【今回のもやもや】
仕事をしながら法律の勉強は、正直負担です。効率よく勉強をする方法はありますか?
今まで専門的に法律の勉強をしたことがありません。入庁後、法律に触れる機会が多く正直戸惑っています。仕事をこなしながら、効率よく勉強をする方法を知りたいです。
https://jichitai.works/article/details/454
採用に専門試験がない自治体もある中、お仕事でどのように法律に興味を持っていただけるかを念頭に執筆をしました。
なお、相談室への寄稿は、この後も何度か予定されています。お楽しみくださいませ。
他の記事も充実している、ジチタイワークスのサイトはこちら↓
https://jichitai.works/
「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」の構成
第三者から卵子や精子の提供を受けた生殖補助医療で生まれた子どもの親子関係を明確にする民法の特例法が4日、衆院本会議で可決、成立した。卵子提供では産んだ女性を母とし、精子提供では夫を父とする。親子関係部分の施行は公布から1年後。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/72394
12月11日に公布された官報の掲載は、こちら↓
https://kanpou.npb.go.jp/20201211/20201211g00259/20201211g002590004f.html
法律の背景や内容については議論もあるとことですが、それはさておいて、議員立法としての構成が顕著なので、法制執務にご興味ある方はご確認いただけたらと思います。
目次
第一章総則(第一条・第二条)
第二章生殖補助医療の提供等(第三条−第八条)
第三章生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例(第九条・第十条)
附則
全10条の決して長くない法律ですが、章立てで構成されています。逆に言えば、章立ては、条数の多さを必ずしも必要としません。
議員立法の内容は政策的な誘導が主体であることが少なくなく、具体的な規定を控える一方で、少ない条数で広範な対象を含むことから、章立ての構成になることは少なくありません。
さて、本文ですが、法律の名前に比して「民法の特例」に関する記述は、わずか2条(第3章)しかないのが目を引きます。
一方で、基本理念や国・医療関係者の責務、必要な国の措置(知識の普及等、相談体制の整備、必要な措置等)は、第2章にまとめて掲載されています。
前述のとおり、本制度については様々な議論もあることから、わずか2条の「特例」に関し必要な事態が積み上げられているとも言えるでしょうか。
自治体の方も、議員立法により「知識の普及等、相談体制の整備、必要な措置等」が委ねられた場合は何が行いうるか、シミュレーションしてみても面白いではないでしょうか。
Re:目をさませ僕らのシステムが何者かに侵略されてるぞ
Re:目をさませ僕らのシステムが何者かに侵略されてるぞ
半鐘さんが久しぶりの更新。お元気でしたか(^^
自治体の情報システム 仕様統一を義務づける旨の法案が提出されるという報道を受けてのご指摘です。
方向性については、理解もするし、うまく運ぶといいなと願うところですが、
ですがね、
システムの次期更改が決まっている自治体だってあるだろうに……そういうとこだぞ?
http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-1202.html
法案の内容を見ていないので、義務付けがどのような内容なのは気になるところですが、既存のシステムもいたずらに乱立したものばかりではなく、自治体が工夫の上で構築されたものもあるでしょう。
「統一化」と「標準化」の違いを許容できる内容であれば、とは思います。
「公務員のカスハラ対応術」
- 作者:吉田 博
- 発売日: 2019/10/19
- メディア: 単行本
これについて著者は、民間企業の目的が「再び顧客に商品を買ってもらい、もって、企業収益を確保すること」であるのに対し、行政の目的は「全体の住民福祉の向上」であるからと説明します。
とはいって、著者は、窓口における個別の対応において、一方的に自治体の立場を説明すればよいとは言いません。
応答的に相手に対応しながら、適宜「困りごとの領収書(あなたが困っている事態については理解しましたよ、という共感の提示)」を与えることが大事と説明します。
世にクレーム対応の本は数多くあれど、公務員の独特の立場を踏まえた解説が記述されることは多くありません。
若い職員から管理職の職員まで幅広い層に読んでいただきたいと思います。