Re:パブリックコメント手続を経なかったものの効力はどうなる?
tihoujitiさんがご掲載の記事から
行政手続法が改正され、いわゆるパブコメがかなり普及するようになってきている。そんな情勢のなか、頭からこびりついて離れない、モヤモヤした疑問点として、「パブコメを経る必要があったものについて、パブコメを経ることなく決定してしまったものの効力は、果たしていかに?」ということがある。
http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20070722#p1
上記に続けてtihoujitiさんは「とはいえ、制度設計は様々なので」と前置きされた上で
ただ、パブコメに関しては、住民の意見を募る手続であるため、その住民の代表である議会で可決されれば、それをもって瑕疵が治癒されたというのは、やはり強引なのだろうか。逆に、議会の議決が不要な、行政計画や規則などについては、このいささか強引な理論は全く通用しないけど。
と記述されていますが、この分野の嚆矢である横須賀市パブリック・コメント手続条例に関する資料では「コラム」として以下のように記載されています。
しかし、万が一にもパブリック・コメント手続を漏らして条例案を策定し議会の議決を得たり、行政計画を策定し実施したような場合はどうなるのだろうか。「条例」について考えてみると、地方自治法に基づき議決成立した条例を、パブリック・コメント手続を経ていないからといって無効とは言えないだろう。やはり、パブリック・コメント手続制度は行政性善説に立った制度にとどまるのだろうか。
(108頁)
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疑問なげっぱなしでありますけれども。
これに対し、政省令などの「命令等」を対象に定められた行政手続法の意見募集手続については以下の旨の指摘があります。
Q15 意見公募手続の実施や実施しなかった場合の公表などを行わずに定められた規則等の効力はどうなるのか。
- 改正法で定められた手続に違反して定められた政省令などに基づき行われた処分がある場合、当該手続違反は処分の違法事由になり得ます。
- 実際には、裁判所において、具体的事案に係る個別の処分の違法事由等に則し、当該政省令などの効力を判断することになると考えられます。
(26頁)
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行政手続法は法律を守備範囲とせず、その目的は「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資すること(第1条)」でありますので、上記のような手続を逸脱した行為については厳とした取扱いがなされてしかるべきと議論ができ、妥当な解釈であろうかと思います。
さて、条例や計画についても、もちろん、パブリック・コメント手続をしなかった事実のみをもって、制定された内容が無効になるものではないでしょうが、最終的な解釈権は個別具体的な事例ごとに司法にあることを行政の人間は胸に止めておくべきでしょう。