自治体法務の備忘録

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「目的外使用許可」と「行政財産の貸付け」

 洋々亭さんのところの掲示板で、庁舎内に自動販売機を設置する場合の取扱いについて、刊行されたばかりの「自治体法務NAVI」の記事を引用させていただいた上でコメントさせていただきました。

 自動販売機の設置については、施設管理者が自らの意志で、その利用が施設のために使われる限りは、目的外使用許可に当たらず、通常の契約行為で取り扱うことが可能との解釈があります。
http://www.hi-ho.ne.jp/cgi-bin/user/tomita/yyregi-html.cgi?mode=past&pastlog=135&subno=15156

 なお、上記の私のコメントは契約行為としての取扱いながらも、自治法に基づく庁舎内の余剰スペースの活用を想定したものではありません(詳しくはリンク先をご確認ください)。
 さて、自治法に基づく「余剰スペースの貸付け」と「目的外使用許可」の線引きについては、実務上の取扱についていささか悩まされるところですが、以下の説明がわかりやすいかと思います。

〔新版 地方自治問題解決事例集〕第3巻 財務編

〔新版 地方自治問題解決事例集〕第3巻 財務編

 「目的外使用許可」は、行政上の許可処分として行う。許可処分であるので借地借家法の適用はない。また、公用・公共用の必要性が生じたときには、自治体が一方的に取り消しうるものである。この場合、なお使用権を保有する特別の事情がない限り、使用者は補償を求めることはできない(最判49年2月5日)。
 一方、貸付けは契約行為であり、借地借家法民法の適用を受け、相手方に借地権や借家権が発生する。また、契約期間中の解除は、公用・公共用に供する場合であっても損失補償を行わなければならない(自治法第238条の4第5項)。
(349ページ)

 上記の説明は続けて、「1年から2年程度の短期で暫定的に使用させるならば、目的外使用許可が適し、それ以上の期間、使用を認めることが可能であるならば行政財産の貸付けが適する。」と記述します。*1
 私人間の「契約行為」と異なる、一方的な「権力行為」としての「行政処分」の理解って、初学者には理解が難しい側面があるかとは思いますが、庁舎の余剰スペースの活用というトレンドの課題でありますし、本事例は研修などの題材でも興味深い事例かもしれないですね。
 「行政処分」の理解が、行政庁としての役割(およびその責任)の自覚に寄与するものではないかとも思うところです。

*1:洋々亭さんの掲示板でも、その供用期間が判断基準になると、ごうじさんが指摘されていました。