自治体法務の備忘録

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「利用料金」と行政処分

 洋々亭さんのところの掲示板から

その収入に対して、課税されますか?それとも、いくら設けても、公設民営のためや次への事業展開のため、課税されないのでしょうか?
http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/yybbs/#38338

 指定管理者による管理の場合、公の目的のために設置された施設の利用と、それに伴う料金の支払いについて、理解が混乱しやすいように思えます。
 そもそも、「公の施設の使用」と「使用料の賦課」or「利用料金の支払」は一体ではなく、パラレルな概念であることに注意が必要です。
 市民会館などの施設使用は、一般に申請に基づき利用が許可されます。ここで「利用の許可」は「申請に基づく処分」であるわけです。
 それに対し「使用料の賦課」は、上記の許可が行われた際に、行政庁から一方的に行われる行為です。したがって「不利益処分」になります。
 怪訝な御顔ですね。「使用料は申請に基づくものじゃないの?」そう聞きたそうなご様子。
 でも、ちょっと事例を考えてみてください。教育財産の利用許可は教育委員会が行うのに対し、それに伴う使用料の賦課は首長が行うでしょう?それぞれの行政処分が別個であることは、処分庁が違うことから明らかです。
 さて、「利用料金」制度は、使用に伴う料金について、指定管理者の収入にさせようとするものです。
 利用料金は、条例にその内容が定められてはいても、「公法上の債権」ではなく指定管理者の「私法上の債権」です。自治法の規定に基づいて、条例で徴収の根拠とその額の上限について定められているにすぎない。
 現に、「利用料金」が納付されない場合は、役所や指定管理者が自力執行を行うことはできず、民事訴訟法上の手続きによることになります*1
 したがって、ちょっと脱線しますが、減免の取り扱いについても、「使用料の減免」が一般に「申請に基づく処分」であるのに対し、「利用料金の減免」はそもそも行政処分ではありません。

利用料金については、使用料に見合うものではありますが、使用料とは異なり、その収入が指定管理者に帰属し、その債権の性格も私法上の債権であると解されることから、その減免についても、公権力の行使の問題ではなく(後略)
指定管理者制度のすべて 改訂版」(第一法規)155頁

 ややこしいのは、ちょっと戻って、利用料金の根拠のなる「使用の許可」自体は行政処分であることです。
 複雑なようですが、指定管理者の制度自体が「使用許可に関する行政処分を民間に行わせる」ことを眼目に置いたものであることに留意してください*2
 このように分解すると、「利用料金」として指定管理者が入手する利益について、税務上、通常の「売り上げ」と特に異なる取り扱う必要がないことの理由が見えてきます。

*1:「使用料」の場合は、地方税法の滞納処分の例により処分することが可能です。

*2:逆に言えば、指定管理者に行政処分を行わせない場合は、通常の業務委託と大した差異がないことになります。