自治体法務の備忘録

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「交渉」という手段

交渉ごとには相手に応じた当意即妙の対応が必要であって、なかなかマニュアル化しづらい部分がある、という事情は確かにあるだろう。実際、役所に営業に来られる方々を見ていても、うまい・へたが歴然と表れていて怖いほど。あれって、究極的には練習よりセンスなんだろうな〜、と、センスのない営業マンさんのトークを聞いていると思ってしまう。(余談だが、交渉力の絶好の訓練になるのが、役所の窓口に営業に来られる方々の観察だ。特に生命保険の勧誘員のトークは参考になる)
http://d.hatena.ne.jp/hachiro86/20100914/p1

 上記は、hachiro86さんが『できる公務員の交渉力』という書籍のご紹介の中で書かれた所感です。
 氏は続けて「とはいえ、個人差以前の最低限の「キホン」というのは存在する」と交渉力の習得に関する必要性について論を展開させます。
 ここでhachiro86さんは生命保険の勧誘員を例に挙げていらっしゃいますが、私が前職の生命保険会社でセールスマネージャーを務めていた頃は、確かにセールスマンの販売能力の向上は職務の中でも大きな割合を占めるものでした。
 ご指摘のとおり、「交渉」には技術的によるものが少なからずありまして、身なりの整え方から話法、話題の提供まで、ロールプレイングによる練習を経て、磨いていきます。
 会社の立場からすれば、一定以上の販売能力を習得し、社の方針のままに数字を挙げてくれるセールスマンが望ましいのですが、そんな中、顧客の信頼を得て継続的に数字を挙げられるのは、時には社の方針にも反し、マネージャーに食ってかかるような気骨のある人たちであるのは興味深かったところです。
「所長は一代でも、お客は末代までだから」
 恐ろしいことをさらっと言います。組織経営上は諸刃の剣ではあるのですが、心強く思えたのは事実です。
 さて、私が個人的に感じているだけかもしれませんが、行政の職員は「交渉」という言葉について、いささかマイナス的なイメージを持っているような気もします。
 法定事項の執行機関たる行政とはいえ、その行為に常に正当性が担保されているわけではありません。いくばくかの技術に支えられた誠意ある説明で納得いただけるように努力するのは当然のことですが、地域の課題の解決のために、法律の範囲内で解決策を探る「交渉」も、なにより政策法務の一側面でしょう。
 翻って我が身となれば、期待されるべき「交渉力」を持つかは疑わしくはありますが、心意気は高くありたいものです。