自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

土地区画整理事業の「民営化」

 このたびの第2次一括法に伴う権限移譲に際して、土地区画整理法に規定する区画整理会社を調べるに当たり、標題に掲げた興味深い指摘を見つけました。
 「区画整理会社」とは、平成17年の法改正により追加された制度で、民間のノウハウや資力・信用を活用して土地区画整理事業を推進しようとするものです。一方、区画整理の行為主体としては、「土地区画整理組合」が従来から存在するのは皆さまご存知のとおりでしょう。
 法改正時の国会会議録から引用しましょう。

【第162通常国会衆議院国土交通委員会(2005年3月30日)
○竹歳政府参考人 我が国の現下の重要課題でございます全国都市再生の実現のためには、中心市街地の活性化など各都市の課題を解決するための重要な手法となっておる土地区画整理事業の活用が求められております。
(略)
 先ほど申し上げましたように、平成十四年に再開発の会社の制度ができておりますが、区画整理事業は換地処分など強制力を伴うものでございますので、平成十四年に導入されました再開発会社と同様に、地権者が支配しているなど一定の要件を満たす会社に限って施行権能を与えるものでございます。

 ここで先例として挙げられたのが都市再開発法に基づく「再開発会社」です。
 再開発会社の事例自体は、ネットで検索すると少なくないようですが、検索で見つけた制度設計についての批判的な検討は興味深いものでした。

市街地再開発事業「民営化」の法的検討】安本典夫教授(名城大学
もっとも「市街地再開発事業の民営化」ということばには説明が必要であろう。なぜなら,従来から民間団体の「市街地再開発組合」や「個人」(もちろん株式会社,有限会社も含まれる)も事業の施行が認められてきたからである。しかしながら,後で見るように,「市街地再開発組合」は「公共組合」として行政主体の一種とされるような構成をとることによって市街地再開発事業を行う強制的権限を獲得した。他方,純粋の民間の事業主体である「個人」は,全員同意による市街地再開発事業を行うのであって,強制的な事業としては行うことができない。それに対して,本改正は,商法上の株式会社,有限会社法上の有限会社に,そのような民間会社そのものとして事業遂行の強制権=「権力」(なかんずく土地収用権)を与えた。これは,民間会社がそのような「権力」をもつことに何ら問題はない,ともいうべき論理にもとづくものであって,従来の枠組みを超えるものである。その意味では,まさに(強制的)市街地再開発事業の「民営化」というべきものである。
(2ページ)
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/02-6/yasumoto.pdf
※強調はkei-zuによる。

 ここで指摘される事項については、土地区画整理法に基づく区画整理会社にも当てはまるように思えます。
 もっとも、ここで法律の制度設計に際しては、民間のノウハウや資力・信用の活用自体が「民営化」の目的とも言える訳で、これとトレードオフになる懸念事項については、運用される事例で注視すべきでしょう。