自治体法務の備忘録

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条例審査ガールのお休み

 tihoujitiさんがご掲載の記事から

夏くらいまではちょっと業務により一層集中せざるを得ず、ここらで一区切り、とします。
http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20150321/p2

 楽しませていただきました。ありがとうございました。
 というわけで、ボクが考えた「第1部完」

ハチ「えーと、今日の郵便物は。ん? 裁判所からの呼び出しかな?」
 封筒を見てアキの顔色が変わった。
アキ「そ、それは、行政事【拳】訴訟…」
ハチ「へ?」
アキ「行政事件訴訟法には特別法が存在するの。宇宙人や異次元からの攻撃に対しては通常の訴訟手続では進行が不可能でしょ。でも、憲法では特別裁判所を認めていない」
フジ「そこで考えられたのが、この方式だ。場所は富士山麓の特設リング。呼び出しを受けた者は、全人類の運命を背負って拳で決着を付ける。」
 いつの間にか近くに来たフジが、アキの言葉を引き継いだ。
ハチ「いや、えーと、あの。異次元とか拳とか、え?」
 そのとき、庁舎の外で大きな爆発音がした。地響きに室内のロッカーがきしむ。
フジ「く、本番前に偵察部隊がやってきたか。うちの情報公開担当に、この場はしのいでもらわねばならん」
アキ「特設リングでの戦いはトーナメント形式で行われるの。でも、緊急事態に対応できるメンバーがうちの役所には…。今からじゃ、百戦錬磨の任期付職員を手配する間もないわ」
 話しながら、アキは2冊の模範六法をヌンチャクのようにつないだ。かなりの破壊力があるはずだ。轟音が近くなり、獣が叫ぶような声が室内にいても空気を震わせる。
フジ「ハチ、お前が一緒に戦える仲間を連れて来い! 特設リングの会場で会おう!! ごふう…」
アキ「ああ! 一括法放射線病に侵されたフジねぇが吐血を!!」
 この場には不似合いな笑顔の課長がハチを促した。
課長「何をしているのです。この場は私達に任せなさい」
 ワイシャツの袖をまくった両手には「ワークブック法制執務」と「法制執務詳解」が握られていた。軽いジャブが空気を鋭く切り裂く。
課長「自治法の最新の逐条が間に合えば良かったのですが、仕方ありません」
ハチ「で、でも」
アキ「急いで!」轟音にかき消されないよう声を張り上げた後、彼女は厳しい顔をちょっと緩ませた。「私、あなたが帰ってくるのを待ってる」
 アキの頬に朱が差したが、瞳に涙があふれるハチがそれに気が付いたかわからない。
ハチ「わかった」大きく息をして頷く。「でも、仲間を迎えに行くのは、ここで皆と戦ってからだ」
 馬鹿だな、と言いながらフジは笑っている。
フジ「じゃあ、次の合図で一斉に執務室から飛び出すぞ!」
 合図の瞬間、室外が光に包まれ真っ白になった。決意を固めた彼らに、もはや雑音は聞こえない。
 彼らは飛び出した。可能性と未来に向けて。
【第1部 完】