自治体法務の備忘録

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続・「公表」という手法

 昨日、「公表」の取扱いに係る記事を掲載しましたが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070130/p3)、bottomさんが先日(http://bottom.at.webry.info/200701/article_23.html)に続いて、「公表制度の整理」として記事を掲載くださいました。(http://bottom.at.webry.info/200701/article_25.html自治体法務担当の方は必読
 私自身の前述の記事は、xpの再インストールでくたびれ果ててる上で書き飛ばしてしまったきらいがあって、bottomさんの丁寧に関係各書からの引用を拝見すると冷や汗をかく思いがします。ご自身も議会のご準備でお忙しいでしょうに、と心配しながらも勉強させていただきました。
 さて、そんなわけで先日の私の記事では言葉足らずなところがあるのですが、「公表」という手法に「制裁的」な側面があることはもちろん否定しないわけで、また、救済の手段として国家賠償請求の手法があることも理解しているところです。
 また、その運用に当たって、事前に不利益処分の取扱いに準じた規定を設けるべきであろうことは、私自身の過去の記事に掲載したことがあります。(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20051001/p2
 しかしながら、「制裁的」なものでありながらも「行政処分」でないことをもって行政不服審査法行政事件訴訟法取消訴訟については、対象となり得る旨のbottomさんのご引用にはありますが)をすり抜けてしまうことが、個人的にはどうにもキモチワルイ。
 実際に「公表」が実施されれば、例えば5万円程度の「罰金」よりも遙かに影響があることは論ずべきまでもないわけで(「公表されることを意に介さない者に対しては全く効果がない(高田敏編著「行政法」)」ことはとりあえず留保することとして)、もしそれが事実上運用不可能な規定であるならば、むしろ法の信頼を損なうものなのではないかと懸念するところなのです。(「せいぜいは脅しに使うだけで、床の間に飾っておくだけの張り子の虎の感がないではない。(阿部泰隆「行政の法システム(上)(下)〔新版〕)」)
 逆に言えば、条例において、「情報提供」として説明できる範囲を超えるような「制裁的」な「公表」規定を設けるに当たっては、先日の私の記事でご紹介したような千葉県において検討された内容まで踏み込んで法設計が試みられるべきでしょう。(その手法の導入の是非自体はさておくとしても)
 当然のことながら、「んー、『罰金』規定は検察協議しなきゃいけないし、まあ『公表』規定でも書いとけ」という安易な法設計が許される筈がないのは言うまでもありません。
 なお、bottomさんが引用された中では、「公表事例に該当することを判定する第三者機関を関与させることで、判定に及び腰である公務員をサポートする仕組みが重要になる。(大橋洋一行政法:現代行政過程論-第2版.-」)」という指摘が個人的には興味深かったです。
 いずれにせよ、この分野の進捗には引き続き注視が必要です。