自治体法務の備忘録

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未納給食費に係る法的対処

【強制徴収など協議 給食費未納対策で藤岡市教委】
 小中学校の学校給食費未納問題の解決を図ろうと、藤岡市教育委員会が来月にも給食費未納問題検討会(仮称)を設置することが十九日、分かった。(中略)悪質な未納保護者を対象に、法的措置を含めた対応を検討する県教委のモデル市町村に選定されており、検討会で効果的な徴収方法などを協議し、県内の今後の取り組みの標準例とする。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20071020/CK2007102002057816.html

 最近問題となっている給食費の未納については、多くの自治体で法的対処が検討されてきています。

給食費未納 6カ月以上滞納者へ方針 大阪市差し押さえも】
 大阪市教育委員会は二十日までに、支払い能力があるのに小中学校の給食費を六カ月以上滞納している保護者に対し給与差し押さえなどの法的措置をとる方針を決めた。
 督促のマニュアルを小中学校に配布、本年度中に実施する。政令指定都市での導入は仙台市に次ぎ二例目という。市教委幹部は「従来はペナルティーがなく“逃げ得”の面があったが、法的措置で抑止効果を期待できる」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007102002057881.html

大阪市教委、6カ月以上の給食費滞納に法的措置へ】
 市教委によると、1カ月以上の滞納者に未納通知書と督促状を交付。滞納が3カ月を超えると学校が保護者と面談して事情を聞く。生活苦などの正当な理由もなく6カ月を超えた場合、校長が教育長に法的措置を依頼し、市教委が催告書を送付。さらに滞納が続けば、簡易裁判所に支払いの督促を申し立て、最終的には給与差し押さえなどの強制手続きに入る。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200710200046.html

 そして、実際に運用されている事例も出てきました。

豊後大野市 給食費督促申し立て 滞納2世帯に 県内初の法的措置】
 豊後大野市は17日、学校給食費を滞納している2世帯に対し、大分、竹田の両簡裁に支払いの督促を申し立てた。給食費徴収をめぐり法的措置を取った例は県内で初めて。滞納者が2週間以内に督促に応じず、異議も申し立てなかった場合、財産差し押さえの仮執行など強硬手段に踏み切る構え。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/oita/20071019/20071019_005.shtml

 度重なる督促にも応じない保護者に法的措置をもって対処することについては、現場のご苦労を感じざるを得ません。
 さて、法的措置に当たっては、当然のことながら給食費に係る債権の確定が必要となるわけですが、学校で実際に支給される給食が、集められた給食費をもって賄われる限りは、そもそも債権が存在しない事態も想定できますので注意を要します。

 学校給食法6条2項によれば、学校給食費は、学校給食を受ける児童又は生徒の保護者の負担とするとしか規定されていません。したがって、学校給食費については、普通地方公共団体の収入ではありません。各地方公共団体によって違いがあるかと思いますが、多くの場合、給食を実施する学校か、あるいは財団等の公益法人が、児童生徒の保護者から、事実上、学校給食費を集金し、これで食材等を購入しているものと思います。学校設置者である市町村が、児童又は生徒の保護者に対し、債権を有しているわけではありません。
自治体法務研究」No.4 2006年春号(ぎょうせい)90頁

【学校給食法】
 (経費の負担)
第六条 学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。
2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は、学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第二十二条第一項に規定する保護者の負担とする。

 逆に言えば、市が強い態度で滞納者に対処するに当たっては、事前に債権債務の確定に関する法的な「仕組み作り」(例えば、明確に「契約」としての形態をとるなど)が必須であると考えられます。
 また、簡易裁判所への申立てに対し、相手が督促異議を申し立てた場合は、訴訟に移行するので、議会の議決が必要となります。

民事訴訟法】
 (督促異議の申立てによる訴訟への移行)
第三百九十五条 適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

 運用に当たっては、関係機関の連絡を密にし、適正な運用が心がけられるべきでしょう。