自治体法務の備忘録

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行政実例に従った措置が違法とされた事例

 前述の「督促異議の申立てによる訴訟への移行」については、過去に行政実例に従った自治体が敗訴した事例があります。
 ご参考まで、事例を引いておきましょう。

【昭和59年5月31日/最高裁判所第一小法廷】
 大津市が市民税の納税滞納者に対し、地方税法および国税徴収法により貸金債権を差し押さえた上、貸金債務者に対して簡易裁判所に支払命令を申立てたことについて、貸金債務者が異議の申立てをしたことによる、異議申立にともなう支払命令申立移行訴訟において、議会の議決の必要性が争われた。
 「訴えの提起」は、本来、地方自治法第96条第1項の規定により議会の議決を必要とされるが、「支払命令の申立ては『訴えの提起』に該当しない」との行政実例(昭和41年1月1日)の解釈に従って議決を経なかったことに対して、「普通地方公共団体の申立てに基づいて発せられた支払命令に対し、債務者から適法な意義の申立てがあり、民事訴訟法第442条(現行法では第395条)の規定により同支払命令の申立ての時に訴えの提起があったものとされる場合においても、地方自治法の規定により議会の議決を経なければならない」とした。

 最高裁の判決はこちら→http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=26130&hanreiKbn=01
 なお、天野巡一教授(岩手県立大学)は、多くの自治体でよりどころとされる行政実例が結局は法令解釈の一つにすぎない具体例として、上記の判決を政策法務研修において取り上げられるそうです。(「自治のかたち、法務のすがた 政策法務の構造と考え方」(公人の友社)49頁)