自治体法務の備忘録

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地元の同意がないことを理由とした不許可処分が違法とされた事例

 平成19年12月9日に最高裁で出された標記に関する判決について、「地方自治職員研修」08年3月号(公職研)に、羽根一成弁護士による解説が掲載されていました。

地元の同意を求める行政指導は、紛争防止のためには軽視できませんが、それがないからといって不許可処分をすると違法とされる場合があり、裁量判断のあり方を示唆する判例としてご参考になさってください。
(66頁)

 判決文は、最高裁のサイトに既にアップされています。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=35469&hanreiKbn=01

申請に係る占用が当該一般公共海岸区域の用途又は
目的を妨げないときであっても,海岸管理者は,必ず占用の許可をしなければないないものではなく,海岸法の目的等を勘案した裁量判断として占用の許可をしないことが相当であれば,占用の許可をしないことができるものというべきである。
(略)
 もっとも,一般公共海岸区域の占用の許可をしないものとした海岸管理者の判断につき,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があった場合には,占用の許可をしない旨の処分は違法として取り消されるべきものとなることはいうまでもない。
(略)
 ところが,知事から権限の委任を受けた上告人は,被上告人が本件海岸について行政財産の使用又は収益の許可の申請書を提出しようとしたのに対し,被上告人が地元の漁業協同組合の同意書を上記申請書に添付していたにもかかわらず,新たな同意書を提出するよう求めた上,関係市町村長の同意がないことをその理由の一つとして,使用又は収益の許可をしない旨の通知をし,被上告人のした一般公共海岸区域の占用の許可の申請に対しても,地元の漁業協同組合の占用期間に係る同意がなく新たな同意書の提出もないことをその理由の一つとして,本件不許可処分をした。
(略)
 これらの事情を考慮すると,本件海岸の占用の許可をしないものとした上告人の判断は,考慮すべきでない事項を考慮し,他方,当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができ,本件不許可処分は,裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となるものというべきである。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071207142721.pdf