自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

「自治体職員のための政策法務入門」総務課の巻

 「政策法務ファシリテータ」に掲載の、シリーズ第1巻の書評につきまして、ご案内のみで(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20090510/p3)、その内容について触れておりませんでした。
 第一法規さんのご好意により同誌から転載させていただきます。限られた字数で本書の魅力を感じていただけたら幸いです。

政策法務について参考になる本を聞かれたんですけど、何がいいですかね?」「そうだな。政策法務は、現場における具体的な法運用の実践こそ真髄だと思うんだ。その意味で、まずは学術的な専門書よりも、日常業務の中でその大事な『気づき』を与えてくれるものとして、この『自治体職員のための政策法務入門』シリーズを薦めてみたらどうだろう」
 架空の自治体を舞台に、自治体職員にとって身近な題材を取り上げ、ドラマ仕立てで進行する本書に倣ってその内容を端的に紹介すれば、上記のようになるであろうか。
 既に「市民課の巻」「福祉課の巻」が刊行されている本シリーズ、満を持して第1巻「総務課の巻」の発刊である。
 折しも先頃、人事異動の春を迎えたが、本書は、若手職員の総務課への赴任で幕が開く。彼にまず叩き込まれるのは文書管理の重要性だ。その後は新市長の当選や自治基本条例の制定が大きな山場となり、その他情報公開や庁舎管理など、折々の困難に総務課の職員が対処していく姿が描写される。頼りがいのある登場人物を含め、物語に類似する例を、読者が自らの身近に探すのも楽しい読み方だろう。
 実は、本書の刊行前には若干の懸念があった。既刊の2冊は、「現場」における実践的な法運用についての「気づき」を与えてくれる好著であった。だが、総務課のような内部管理部門を題材としたときも、それへの期待を十分にかなえるものになりえるのか 。
 しかし、心配は無用であった。それどころか、総務課に所属する我が身にとって、その内容がいかに身につまされるものであることか。そうだ、ここも「現場」だ。
 結局のところ、実務における法運用に携わるのは血の通った人間であり、その葛藤と可能性を描き出す手法として、本書の試みは成功していると言って良い。
 最新の判例自治体法務の動向を踏まえた解説と丁寧な注釈も実務者には嬉しい。総務課に所属する職員ばかりか、多くの方の手にとっていただければと思う。

政策法務ファシリテータ」vol.22(第一法規