自治体法務の備忘録

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教育委員会と公営企業

若手職員「教育委員長と教育長のどっちが偉いかはわかったんですけど(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100812/p1)、教育委員会と公営企業管理者って、どっちが偉いんですか?」
私「いい質問だね」

図解地方公営企業法 (地方公務員のための図解シリーズ (1))

図解地方公営企業法 (地方公務員のための図解シリーズ (1))

管理者は公営企業の経営の責任者として代表権までを含む広範な権限と責任を与えられ、身分保障もあるなど、独立の執行機関並みの扱いを受けていますが、組織上はあくまでも地方公共団体の長の補助機関に止められています。
(37頁)

私「教育委員会は、執行機関としての市長と同格、これはわかるよね」
若手職員「はい」
私「市長の補助機関であるという点では、公営企業管理者は、独自の執行機関たる教育委員会より『格が下』と言えるかもしれない。ただ、『格上』『格下』はいろいろな局面があるから、一概に判断はできない」
若手職員「公営企業管理者は、自分の名前で契約の締結とかできますよね」
私「そう。企業会計の独自執行は、それこそ『公営企業』の目的だから」

 (前略)公営企業は、独立採算の原則の下に経済合理性を重視して経営される自主的な一個の経営体です。このように一般行政とは性格が異なる公営企業を効率的に経営するためには、一般行政組織から独立した経営組織を設けることが必要です。
 このような観点から、地方公営企業法は、公営企業について一般行政職から独立した経営組織を設けることとし、その頂点に管理者を置き、公営企業の経営に関する非常に広範な権限を付与するとともに、原則として公営企業の経営に関しては管理者が当該地方公共団体を代表するものとしています。
(36〜37頁)

私「会計行為の独自性は大きいよね。教育施設である博物館って、使用許可は教育委員会が出すけど、使用料の帳票って誰の名義で切る?」
若手職員「…市長名です」
私「給料についても、僕らの給料は給与条例主義に基づいてその額が条例で定められているけど、企業職員は管理者によって独自に定められている。その大枠は条例で定めるよう自治体の管理下にはあるけどね」
若手職員「労働三権の取扱いも僕らと異なりますよね」
私「うん、だからやっぱり『公営企業』なんだね」
若手職員「教育委員会って、独自の執行機関だから、自らの所掌するものについて規則の制定権があるじゃないですか」
私「はいはい」
若手職員「公営企業って、市長の補助機関なのに規則の制定権があるんですか?」
私「『規則』というか『管理規程』だね」

 管理者は、教育委員会選挙管理委員会のような独立の執行機関ではなく、あくまでも長の補助機関にすぎませんから、長部局の部長等と同じく、規程のようなものを制定する権限は本来ないものと考えられます。しかしながら、管理者は、公営企業の日常の業務の執行に関する広範な権限を有し、これを自らの名において地方公共団体を代表して行使できるものとされていること等から、このような権限行使を的確に行う手段の1つとして、独立の執行機関並みの規程制定権が与えられているのです。
(57頁)

若手職員「なんだかピンときませんね」
私「うちみたいな小さな自治体だと、普通の部局との違いってわかりにくいかもしれないね。でも、極端な話し、都営地下鉄を運営する東京都交通局とか大きな組織を考えてごらん」
若手職員「うーん」