自治体法務の備忘録

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仁義なき日本沈没

 まず書名が素晴らしい。

仁義なき日本沈没―東宝VS.東映の戦後サバイバル (新潮新書)

仁義なき日本沈没―東宝VS.東映の戦後サバイバル (新潮新書)

 年度末の忙しさにもかかわらず、一気に読んでしまいました。
 書名の由来は、1973年に東映で公開された「仁義なき戦い」と東宝で公開された「日本沈没」によります。著者は、前者を「『昔』の終わり」と、後者を「『今』の始まり」と例えて、戦後の映画会社の興亡を、両社の営業方針やカラーの違いを比較しながら解きほぐしていきます。
 東映東宝というと、私達の世代には「まんが祭」と「チャンピオン祭」と題された子ども向けの興行が懐かしく思い出せますが(古いね、どうも)、都会的なイメージを持つ東宝に比して、なんとなく泥臭いイメージを東映に感じていたことは事実です(それがいいんじゃない!と呼ぶ者あり)。
 円谷英二の没後に東宝の特撮部門が大幅に縮小され、私のような怪獣ファンは子ども心ながら憤るところもあったのですけれど、戦後すぐの東宝争議(「空には飛行機、陸には戦車、来なかったのは軍艦だけ」)の大騒ぎから続く制作部門と興行部門の微妙な関係を説明されると納得させられます。
 そして、そこから浮かび上がるのは戦後史であり、その中で必死に生きる職業人たちです。素晴らしい。
 なお、本作は、前述のとおり73年の両作品の公開がクライマックスですが、これらの作品に続く大作と、それらが切り開いた日本映画界の展開については、
『砂の器』と『日本沈没』 70年代日本の超大作映画

『砂の器』と『日本沈没』 70年代日本の超大作映画

が詳しい。同書で「日本沈没」に併記されるのが翌74年公開の松竹作品「砂の器」であるのが興味深いところです。
 ご興味ある方は併せてご一読ください。