自治体法務の備忘録

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教示の例文

公務員の語感だと「裁決等」の方が決定も含まれるって気がするんですけど、定義で「等」はあまり使わないんでしたっけ?

 先日、「定義」って、書いてしまいましたが、厳密には「略称」規定ですね。「以下単に〜」の語句も入っていますし。
 困ったときの

自治立法実務のための法制執務詳解

自治立法実務のための法制執務詳解

を見てみました。

(101ページ)
 並列する語句の最初の語句を略称とする場合、たとえば、「工場又は事業(以下単に「工場」という。)」(エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)第3条第1項)(「A又はB」「A及びB」のケースでは、他に「組合員又は会員(以下「組合員」と総称する。)」(中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号)第7条第1項第2号)、「地方実施機関及び全国実施機関(以下「地方実施機関等」という。)」(貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)第60条第2項)とするものがある。「(以下「A等」という。)」とするものが多い。)

 「多い」か。
 これによると「等」を付けないのは、例外的なものようですが、翻って、行政不服審査法について考えてみると、「審査請求」を原則として「異議申立て」が例外的な取扱いであるところ、それらを総称するにあたって、並列的な取扱いとして「等」を使わず、「審査請求」の字句に「異議申立て」の内容を含む規定ぶりとしたのでしょうか。でもややこしいな。
 教示の文言については、全国の自治体で頭をひねって作成しているわけですが、各課でそれぞれ入手された内容を見ると、「これで良いの?」というものがあったり。

教示の例文

 先日掲載しました行政事件訴訟法の改正に伴う教示の例(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050213#p1)について、審査請求前置でないものにおいて、「その異議申立てに対する裁決」を「その異議申立てに対する決定」に修正しました。
 なお、修正後の教示例は、以下の通りです。

 この決定に不服がある場合は、この通知を受けた日の翌日から起算して60日以内に市長に対して異議申立てをすることができます。
 また、この決定の取消しを求める訴えは、この決定の通知を受けた日の翌日から起算して6か月以内に、市を被告として(市長が被告の代表者となります。)、提起することができます。ただし、異議申立てをした場合には、この決定の取消しの訴えは、その異議申立てに対する決定の送達を受けた日の翌日から起算して6か月以内に提起しなければいけないこととされています

 行政事件訴訟法第3条第3項で「審査請求に対する裁決」と「異議申立てに対する決定」を「裁決」と定義しているので、それに引っ張られました。すいません。

行政事件訴訟法
抗告訴訟
第3条 〜2(略)
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求、異議申立てその他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4〜5 (略)

行政不服審査法
(決定)
第47条 異議申立てが法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるときは、処分庁は、決定で、当該異議申立てを却下する。
2〜5 (略)

 ああ、恥ずかしい。
 でね、「自治例規担当者のための主要法令トピックス」(第50版・2005年1月号)に教示の例が掲載されていましたことは、以前書きました(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050106#p3)が、同様の誤りがあります(17ページ)ので、ご注意ください。

 今日、根回しのために関係部署を回って説明したら「kei-zuさん、すごい楽しそうですね」と言われて、ちょっとブルー。
 思い起こせば、去年は、消費税の総額表示で、条例改正の可否について振り回されたなあ。事前準備をお願いして回ったにも関わらず、結局、(総額表示だけの理由では、条例改正を)対応しないことになって、オオカミ少年呼ばわりされたものであるよ。こんな頭ならいくらでも下げます。

教示の例文

 もはや、何を今更なのですが、教示の文章を作ってみました。

 この決定に不服がある場合は、この通知を受けた日の翌日から起算して60日以内に市長に対して異議申立てをすることができます。
 また、この決定の取消しを求める訴えは、この決定の通知を受けた日の翌日から起算して(異議申立てをした場合は、その異議申立てに対する決定の通知を受けた日の翌日から起算して)6か月以内に、市を被告として(市長が被告の代表者となります。)、提起することができます。

※法令により審査請求の前置を規定しているもの
 この決定に不服がある場合は、この通知を受け取日の翌日から起算して60日以内に【機関名】に対して審査請求をすることができます。
 また、この決定の取消しを求める訴えは、前記の審査請求に係る裁決の通知を受けた日の翌日から起算して6か月以内に、市を被告として(市長が被告の代表者となります。)、提起することができます。ただし、①審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないとき、②処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、③その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるときは、裁決を経ないでも処分の取消しを求める訴えを提起することができます。

 教示の例につきましては、id:exaさんが掲示されていらっしゃる内容(http://d.hatena.ne.jp/exa/20041026)を参考にさせていただきました。id:exaさんがご指摘のとおり、根拠法令については、記載した方が良いとは思います。特に審査請求前置のものは。
 しかしながら、できるだけ簡素化を念頭に置きましたので、上記の文章とさせていただきました。出訴裁判所や1年の客観的期限についても含んでいません。必要に応じて適宜加えていただければ。

雑誌

 行政事件訴訟法の改正について、書籍は載せてきましたが、雑誌については掲載していませんでしたので、いくつかご紹介します。
・法令解説資料総覧No.274・275「改正行政事件訴訟法自治体への影響」
 対談形式で、出石稔先生が自治体において気になることを宇賀克也先生にズバズバ聞いて下さるので嬉しい。

積極的に条例をつくって地域の実情に応じた対応をすればするほど、自治体は訴えられやすくなるということになりませんか。

・ジュリストNo.1263「特集 行政事件訴訟法
 こちらも対談形式ですが、阿部泰隆先生の厳しいご指摘は、通常の解説本の内容を超えて勉強になります。

(最後に)
本日は、たくさんご教示をいただき、ありがとうございました。しかし、私が提起してきた問題はあまり相手にされていないことを再確認し、その意味では、私の力不足を痛感する集まりでもありました。

判例地方自治No.253〜255「変わる行政訴訟
 ページ数が少ないため、改正のあらましがおもなものです。

行政事件訴訟法 (司法制度改革概説 (3))

行政事件訴訟法 (司法制度改革概説 (3))

商事法務から出ている司法制度改革に関するシリーズのうちの1冊なので、存在は知っていたもののノーチェックでした。今日、新宿の紀伊国屋で手に取ったら、結構詳細な内容が掲載されていて、いままで私がさんざん書き散らかしてきた教示についても結構細かく記載されています。ご興味ある方はご確認を。
なお、「【自治体法務】住民訴訟行政訴訟お役立ち」リストhttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/listmania/list-browse/-/2LSL9DPE4Y2RL/249-1937300-2813906に掲載しました。

詳解 行政事件訴訟法

第一法規から、行政事件訴訟法に関する新刊が11月に出ていました。見逃してた。11月は忙しくて記憶があいまいだからなあ。
http://www.daiichihoki.co.jp/dhweb/product/2a_detail.asp?prid=018721&display=new
amazonには、まだ登録されていないようですが、登録されたら「【自治体法務】住民訴訟行政訴訟お役立ち(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/listmania/list-browse/-/2LSL9DPE4Y2RL/249-7164249-3626744)」に掲載します。