自治体法務の備忘録

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指定の通知の翌日から管理の代行を行うべきか

 地方自治法の改正法(平成15年法律第81号)の経過措置(附則第2条)の解釈について、質問頂きました。
 ご質問の向きは、議会で議決後、指定の通知を行い、協議書の取り交わしを想定していたところ、地方自治法の経過措置に読むと、指定の通知をした日の翌日からは管理の代行に移っていないといけないのか?というものでした。

(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現に改正前の地方自治法第二百四十四条の二第三項の規定に基づき管理を委託している公の施設については、この法律の施行の日から起算して三年を経過する日(その日前に改正後の地方自治法第二百四十四条の二第三項の規定に基づき当該公の施設の管理に係る指定をした場合には、当該指定の日)までの間は、なお従前の例による。

 うーん、確かに指定の日以後は「従前の例」によれない、つまり、指定後は従来の管理の委託を引っ張ることができない。したがって、4月からの施設の管理に先立って1月に指定の通知を行うことはできないように読めますね。
 とはいえ、各自治体の導入スケジュールの例を見ても、施設の管理の開始に先立って指定に係る事務を行う想定のようです。
 また、実際問題として、指定に係る管理の準備のために日数が必要でありましょう。総務省通知においても、協定書の取り交わしが記載されていることから、指定に係る管理の開始の当日に指定の通知を行うことは想定されていないと思われます。

 では、上記問題を回避するためにどのように考えたらよいか。

 先行自治体の規則を見てみましょう。

高梁市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例施行規則】
様式第2号「公の施設の指定管理者指定通知書」
  年 月 日付けで申請のあった、下記の公の施設の指定管理者を次のように決定したので、 高梁市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例施行規則第5条の規定により通知します。
 (略)
 指定の期間
 (略)

流山市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例施行規則】
様式第5号「公の施設の指定管理者指定等決定通知書」
 次のとおり決定したので、流山市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例第6条第2項の規定により通知します。
 (略)
 指定の期間  年 月 日から  年 月 日まで
 (略)

【あらわ市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例施行規則】
様式第2号「指定通知書」
 次のとおり、公の施設の指定管理者に指定します。
 (略)
 指定期間  年 月 日から  年 月 日まで
 (略)

 それぞれ「指定」について「期間」の表現があります。
 つまりですね、この通知の段階では、まだ「指定」は開始していないのであろうと。「管理」と「指定」は密接な関係であるところ、「管理」の開始に当たっての「指定」が前提でありましょう。
 では、この通知は何か、というと、「指定に係る決定の通知」ということになろうかと。

 では、「指定」が行政処分として解せられるところ、上記の通知を「指定」そのものとせず、「決定の通知」とすることに伴い、救済権が狭められることにならないか。
 具体的に言えば、上記の通知の発送後、指定期間の開始までの間に、指定が取り消された場合は、行政不服申立及び取消訴訟の対象となるか否か。
 なるでしょうね。
 行政処分である「指定」の開始以前であるから、処分行為以前の訴えであるとして、「訴えの利益無し」と主張することは無理でしょう。
 というのは、指定の開始を見込んだスケジュールを元に行われた、公募〜選定〜議決〜指定の決定のプロセスにおいて、「指定の決定」は、「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最判1964.10.29)」という「処分性」の概念に照らし、行政不服申立及び取消訴訟の対象となると思われるからです。