自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件

http://courtdomino.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/8e94e6cbb1b3647e4925707c002b1517?OpenDocument
 リンク先は、最高裁のサイト。もちろん、7つ目という違憲判決には注目すべきでありますが。
 id:i_boxさんが選挙無効の訴えではなく、確認訴訟の形態をとったことの戦術性を評価されていますが、15日付け日経新聞朝刊でも以下のように記載がありました。

 国や県を訴える行政訴訟ではこれまでは、既に下された行政処分や公権力の行使が適法かどうかを争う「抗告訴訟」という形式が中心で、国民の権利や利益が侵害された状態を事後的に救済するのは困難なケースも多かった。選挙訴訟でも選挙無効を求めるしかなく、ハードルが高かった。一方、「確認の訴え」という形式は従来は法律で明文化されていなかったため、裁判所が認める例は少なかった。
 このため、今年4月に施行された新しい行政事件訴訟法では、「確認の訴え」が明文化された。今回の最高裁判決は、新法の趣旨に則したといえる。

 確認訴訟については、今後は蓄積が進んで行きそうで、自治体法務担当しては動向が気にかかるところです。
 現状において、「要綱に基づく給付」に係る訴訟の形態について、確認訴訟を積極的に運用していくべきだ、という主張に対し、救済の形態を司法における判断として保留せず、政策的に対象者を積極的に救おうとする判断のもとに、行政庁において、これは「行政処分」だからねと手を挙げる行為を否定できないと思います。確かに、id:paco_qさんがご提唱された「行政訴訟・5つの謎(http://d.hatena.ne.jp/Kaffeepause/20080401)」において指摘がなされたように公定力の問題等、悩ましいものがあるわけなのですけれども。

【宇賀】そのときに問題になるのは実体的な請求権の存在だと思います。法令に基づいた受給権が求められる場合とは異なり、要綱に基づいた補助金ですと、実体的な受給請求権まで発生しているかが問題になると思います。給付請求を提起しても、そもそもそういう実体的な請求権はないということではねられてしまうかもしれません。
【出石】横須賀市では、行政手続条例(平成8年横須賀市条例第3号)を制定したときに「補助金は処分」として明確に位置づけました。横須賀市には補助金等交付規則という規則があって、規則がベースにある補助金の交付だから、これは申請に対する処分に当たるという解釈です*1。行政手続条例に確認規定をおいて、市民の手続上の審査基準も設けるという運用をしています。
【鈴木】一般的には要綱に基づいているから、実体的請求権がないとまでは言い切れないと思います。しかし、例えば、ある定型的な補助金の交付がずっと継続している場合、要綱だから実体的請求権がないということではなくて、その実質を判断するということになるのでしょうか。

鈴木庸夫(千葉大学大学院教授)、宇賀克也(東京大学大学院教授)、中村次良(東京都法務部長)、出石稔(横須賀市主幹)
法令解説資料総覧275号「座談会 改正行政事件訴訟法自治体への影響<第2回>」12ページ

 この点、当自治体でも、行政事件訴訟法の改正時に夜中まで大声で議論されたところでありまして、引き続き勉強が必要です(^^;

*1:【引用者注】一般に自治体で定められる「補助金等交付規則」は、交付に係る実務手順を定めたものであって、「交付の根拠とはなりえないのではないか」という指摘もあります。