自治体法務の備忘録

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児童ポルノと子どもポルノ

 表題で期待した方がいらしたらすいません(えー
 bottomさんご掲載の記事から
http://bottom.at.webry.info/200512/article_14.html
 ご指摘のとおり第12条各号列記事項のあいまいさは、ご指摘のとおり望ましくないと思います。児童ポルノ法第2条を引き写したの定義規定は詳細を極めているの対しあまりに見劣りします。

また、13条の規定については、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)が7条1項と2項で児童ポルノの提供と提供を目的とした所持等した者に、7条3項で児童ポルノの製造した者に、7条4項と5項で不特定多数への提供と公然陳列とそれらを目的として所持等した者に対する罰則を規定していることから、法と奈良県条例の関係が問題になると考えられます。
つまり、児童ポルノの所持という点については、規制が重複します。
ただ法は、あくまでも所持等を罰するのは、児童ポルノの提供や製造を目的としている場合に限っています。
これに対して、奈良県条例では「正当な理由なく」児童ポルノを所持することを須く罰則の対象としています。
したがって、「正当な理由」の解釈にもよりますが、条例は法が対象としていない部分までも横出しして規制しているように見えます。

 この点については、同一のものを規制の対象としても法益が異なる点で説明ができないでしょうか。例えば、「落書き」に対する罰則についての、刑法第261条に規定する「器物損壊」や軽犯罪法第1条第33号後段に規定する「工作物等汚わい」と自治体の美化推進条例の関係のように。
 「児童ポルノ法」と「子どもを犯罪の被害から守る条例」の法益の違いについては以前に掲載したことがありますが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050502/p4)、本条例は「目的」が「子どもを犯罪の被害から守る」ことであるのに対し、同法は「心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的」とされています。
 児童ポルノの規制対象が18歳未満であるのに対し、子どもポルノの規制対象が13歳未満であるのも上記の理由でしょう。

【子どもを犯罪の被害から守る条例】
(目的)
第一条 この条例は、子どもの生命又は身体に危害を及ぼす犯罪の被害を未然に防止するため、県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、必要な施策及び規制する行為を定め、もって子どもの安全を確保することを目的とする。

【児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律】
(目的)
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。

 したがって、前回も書きましたが、児童ポルノ法では萌え萌えハァハァなイラストやアニメーションは規制の対象外とされるわけです(存在しない人間の権利は保護ができない。)。

それと、15条2項で子どもポルノの所持等したことを「自首」した場合の刑の軽減措置を設けられているのですが、これはどういう意味???

 自首減免は、刑法の「減軽することができる」規定に対し、銃刀法では「減軽し、又は免除する」規定とされ、刑法のおける「捜査機関に発覚する前に」という要件も銃刀法にはありません。これは、何より銃の回収を念頭に置かれたものですが、立法者の意図としてはこれと同様ではないですかね。まあ子どもポルノを銃と同列に論じられるかはさておき

【刑法】
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

銃砲刀剣類所持等取締法
第三十一条の五 第三条第一項の規定に違反してけん銃等を所持する者が当該けん銃等を提出して自首したときは、当該けん銃等の所持についての第三十一条の三の罪及び当該けん銃等の所持に係る譲受け又は借受けについての前条第一項又は第二項の罪の刑を減軽し、又は免除する。

 氏の鋭いご考察には日頃勉強させていただいているところ、記載の順が前後しますが、基礎自治体広域自治体の関係について、以下については頷かされてしまいました。

そもそも12条に規定する内容は、県条例によるよりも市町村条例で対応すべきではないかと思うのです。
子どもの問題こそ、補完性の原理ではないですが、まず保護者が対応して、保護者の能力を超える場合は地域が、地域の能力を超える場合は市町村が・・・といったことになるのではないかと思います。
で、子どもの行動範囲は大人と比べて狭いわけですから、広域行政による対応ではなく、市町村区域内で対応できるのではないかと。

 この点、

ただ、この点については、この条例が、奈良県例規集のなかで、第12編警察 第3章刑事、に配置されていることから、まあ、そういうことなわけで・・・。

と述べられていらっしゃるとおり、基礎自治体の立場としては、やはり実効性に警察権力を持つ広域自治体に期待してしまうところです。
 基礎自治体広域自治体のそれぞれの役割分担の上での信頼関係の構築、協力に基づく法設計が今後の課題だなあ、とあらためて思いました(^^;