自治体法務の備忘録

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事務処理特例条例と権限移譲

 exaさんがご掲載の記事から

 匿励条例は首長の権限を移譲するものなので、条例制定権は議決案件だから不可ですとお答えすると、法令所管の省に聞いて、そこから総務省に確認した結果、解釈で不可能ではないとの返答があったという、にわかには信じられない返しがありました。どういう解釈をするのか、どのレベルまで検討した結果の返答か、詳細は確認できませんでしたが、実際に運用する側にとってはとても怖くて採用できないんじゃないかと。
http://d.hatena.ne.jp/exa/20110923/p1

 ご指摘の事項については「地方自治」第765号(11年8月号)に、質疑応答が掲載されています。

 (前略)通常、地方自治法第252条の17の2第1項の規定によって、「都道府県知事の権限に属する事務」を市町村に移譲することができるが、(中略)この権限(kei-zu注:「児童福祉施設の設備・運営基準」に関し都道府県において条例を定めるべき権限)を(中略)市町村へ移譲することはできないか。
 (前略)条例の制定改廃事務については、「都道府県知事の権限に属する事務」ではないが、事務の処理のために必要な条例については、当該事務の移譲に伴い市町村が制定することになる。(後略)
(102頁)

 実は、上記の解釈については、掲載時に、某広域自治体の分権担当者と一緒に首を捻ったことがあります。
 上記の回答には「(参考)」として、「新版 逐条地方自治法 第5次改訂版」(松本英昭)の引用があり、ご丁寧にも「当該条例の制定という権能自体を条例による事務処理の特例の制度により市町村が行うこととすることはできない」の箇所に傍線が引かれています(!)
 一方でこれを覆す意図か、併せて以下の引用もされていますが、勧告の内容をそのまま法解釈に適合させるのは無理があるのではないでしょうか?

地方分権改革推進委員会 第3次勧告(平成21年10月7日)】
 条例に委任する場合、条例制定の主体は、当該基準に係る施設・公物の設置管理の事務を担任する地方自治体とする。
 例えば、設置管理の基準については設置管理の主体であり、許認可等の基準については許認可等の主体である。また、(中略)設置管理の基準に従って許認可等が行われるものとされているときは、設置許可の基準=許認可等の基準は許認可等の主体が定めるべきである。(後略)

 その意図を制度化するのであれば、本来、なんらかの立法上の手当てが必要ではなかったかと思われます。