自治体法務の備忘録

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「公表」という手法

 bottomさんが「制裁的な公表」について、行政法の各書からわかりやすい引用をされています。
http://bottom.at.webry.info/200701/article_23.html
 引用のように、「制裁的な公表」の規定を条例で制定するに当たっては、その根拠を対外的に明白にする目的から、もとより反対するものではありませんが、個人的には、行政法学において「公表」についても行政救済のレールに乗せられるような理論構成ができない限りは、具体的な「公表」の実施に当たって、現状においては「情報の提供」としての説明しか行えないのではないか。
 この点、自治体の法制執務ご担当は、条例において「公表」を規定する際には、以前にご紹介した(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050107/p4)以下の宇賀克也先生のお言葉をご念頭に置いていただきたいと思うところです。

行政指導に従わないことへの制裁ではなく、行政指導に従わない者がいることについて情報提供することに意味があるという説明は可能です。例えば、行政指導に従わない悪質な業者が、どんどん被害を広げていく可能性があるので、こういう悪質な業者がいますよと情報提供として公表をするということですと、一応は説明が付きますね。

 さて、先般、話題にもなりました「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」における、知事の勧告に従わない者に対する氏名公表の措置について、議論の末、規定が削除されたことは記憶に新しいところですが、当該規定について、処分性を有する旨の設計が試みられていたのとの担当者のご証言が興味深い。

 公表制度が行政法上制裁としての性格を有することは疑いのないところであるので、2月議会の条例案の設計段階では、被公表者の権利を擁護するため、勧告と公表を一体的に処分性のあるものとしてとらえ、これを行政事件訴訟法の対象とすることで事前の差止請求の方途を講ずべきことなどの議論があった。その趣旨から、処分性を有する公表制度を採用し条例化すれば、先進的な規定になり得たであろうが、障害者条例では勧告のみを行うこととなったので、この取組みは実現しなかった。
鑓水三千男(千葉県総務部政策法務政策法務室長)「政策法務ファシリテータVol.13」17頁

 この分野の法設計については、引き続き注視が必要です。