自治体法務の備忘録

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勧告・公表の処分性

 行政庁が「制裁的な公表」を行うに当たり、その「処分性」を巡る議論と法設計については以前に掲載したことがありますが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070130/p3)、当時ご紹介した、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」で検討されながらも結局は陽の目を見ることのなかった「勧告・公表制度」に処分性を有する旨の規定について、「法令解説資料総覧No.303」2007年4月号(第一法規)における同条例の紹介において、起草に携われた鑓水三千男氏がご掲載されています。

 公表制度はが行政法上制裁としての性格を有することは疑いのないところであるので、二月議会の条例案の設計段階では、被公表者の権利を擁護するため、勧告と公表を一体的に諸文政のあるものとしてとらえ、これを行政事件訴訟の対象とすることで事前の差止請求の方途を講ずべきことなどの議論があった。その趣旨から処分性を有する公表制度を採用し条例化すれば先進的な規定になり得たであろうが、障害者条例では勧告のみを行うこととなったので、この取組は実現しなかった。
 ちなみに勧告・公表制度について敢えて処分性を認めなくとも、勧告を受けた者が公表されることを阻止するためには人格権に基づく差止請求を行えば足りるとの理解もありえようが、救済方法に複数の選択技を認めることが不都合であるとは思えず、取消訴訟の可能性を当然に排除する必要性はないと考える。
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