自治体法務の備忘録

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政令指定都市

 政令市は、自治法には「人口50万人以上」と規定されながら(本書によれば、神戸市への配慮であったらしい)、過去には実質的に100万人以上が目安とされ、またその後は合併による特例により、結果として、様々な形態が存在する現状があります。
 本書は、戦前の大都市統治から、幻となった「特別市」を経て、政令市が政治の中でいかに取り扱われてきたかを解説します。
 先日、ある研究者の方から雑談で、大阪市の橋下市長は、当初は知事でいらしたので都制度を提案されているが、大阪市長が振り出しであったら特別市制度を主張されていたのではないか、と伺ったことがありました。
 その真偽は不明ですが、本書では章を2つ使って「大阪」地区に切り込んでいます。実際、私が読み始めたのも、それらの章からでした。
 そういえば、政令市にお勤めの方には、私の知人も少なくないな。ご迷惑かと思いますので、お名前は差し控えさせていただきますが、皆さま、おもしろい本ですよ。
 ただ、政令市における「プレイヤー」を論じた第4章において、長と議会との関係を論じた一節のうち、

端的に言ってしまえば、議会が首長提案を過半数で否決したとしても、再議決には3分の2以上の議員の合意が必要となる。そのため、結果として、首長政策選考に近い3分の1の議員たちによった立場でしか、再議決による修正は困難である。
(166〜167頁)

という記述には首をひねるところです。
 拙blogにも過去に記述しましたが、否決された議案を再議に付すことができないのは一般的な理解であるはずだからです。*1
【否決議案の再議】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20120926/p1
【続・否決議案の再議】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20120927/p1
 そのため、上記引用の後段にいたっては、記述の意図を読みとりがたいように思えます。*2

*1:否決議案を再議するために自治法の規定をクリアしようとして、「反対する者」について裁決するイレギュラーな手法も検討できるかもしれないが、かようなテクニカルな手法が、蓄積された議会制民主主義で是とされるかは議論があるところでしょう。

*2:引用の前には、名取良太教授(関西大学)による資料について触れられているのですが、かような指摘が名取教授によるものかまでは判然としません(学会分科会における提出ペーパーでは、確認も難しい)。←名取先生からメールをいただき、修正しました。再議に際しては「修正案」を意識する物であり、否決議案は想定しない、とのことでした。ありがとうございます。