自治体法務の備忘録

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地方交付税「不足」と臨時財政対策債

 普通交付税については、各自治体において、基準財政需要額から基準財政収入額を差し引いた差額」について交付されるものと、一般的には説明されます。
 ところが、現在では、その差額について交付税では全額の措置がされず、一部について自治体で発行する臨時財政対策債に振り返られているのは、皆さまご承知のとおりでしょう。自治体にとってみれば、交付額の不足を感じるところです。
 実は、地方交付税法には、交付額不足の解消に関し、交付税の財源たる法定5税(所得税・酒税・法人税・消費税・たばこ税)の参入率変更まで踏み込む記述があります。

地方交付税法】第6条の3第2項
 毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き第十条第二項本文の規定によつて各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなつた場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第六条第一項に定める率の変更を行うものとする。

 では、そのような取扱いがされているかというと、これがされていない。参考書には以下のような説明がされています。

 地方交付税法は、地方財政計画の歳出・歳入が同額であることは前提ではないので、このような表現になっている。ところが、実際は同額になるように運用されているので、算定の結果、財源不足が生じるのではない。

地方財政のヒミツ

地方財政のヒミツ

(58頁)

 端的に言えば、マクロベースの地方財政計画で帳尻を合わせているので、自治体への交付税に「不足」は生じていない、とする理屈です。な、なんだってー(AA略
 私たち現場の自治体は、個別の算定数値の積み上げで計算された基準財政需要額に対し、交付税がどのように措置されるかに期待があり、また、必要な支出額の積み上げが地方財政計画の総額となるかのような錯覚をしますが、そもそも地方財政計画における歳入・歳出の帳尻合わせは、マクロベースでの財源保障です。
 実のところ、地方交付税による財源保証と財源調整は次の順序で行われます。

  • 第1段階 地方財政計画の策定と地方財政対策 → 地方財源全体のマクロベースでの財源保証
  • 第2段階 単位費用の策定 → 個別事業に係るマクロベースの財源保証
  • 第3段階 普通交付税の配分額の算定 → 個別自治体に対するミクロベースの財源保証と財政調整

自治体歳入確保の実践方法

自治体歳入確保の実践方法

(52頁)

 したがって、地方財政計画で歳入・歳出で不足額が生じていなければ、その手段が臨時財政対策債への振替えという形であっても、普通交付税に「不足」は生じていないという理屈です。
【国の予算と地方財政計画(通常収支分)との関係(平成25年度当初)】http://www.soumu.go.jp/main_content/000154468.pdf
 上記の資料において、右から2つ目の「地方財政計画(歳入)」のうち、中段の「(臨財債)6.2兆円」が交付税から振り返られた分です。ただ、逆に言えは、この6.2兆円の底上げにより、地方財政計画に「不足が生じていない」状況というわけです。な、なんだってー(AA略
 もちろん、このような措置が適切であるかは論議があるところです。そもそも臨時財政対策債自体が、平成13年度に制度化され、平成15年度までの3年間の措置であったはず。
 もちろん、来年度の予算に関し、総務省財務省へ要求を行っています。

平成26年地方交付税の概算要求の概要】

http://www.soumu.go.jp/main_content/000245545.pdf

 ただ、上記の要求は以前からも行われており、厳しい国の財政状況において、実現化への視界は晴れません。