自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

アニメージュと宮崎駿

 お若い方は、オジさんの昔話にお付き合いを。

ジブリの仲間たち (新潮新書)

ジブリの仲間たち (新潮新書)

 本書は、「思い出のマーニー」(2014年)の公開を経て一区切りとした、スタジオジブリ代表の鈴木敏夫氏によるアニメーション制作の内幕話。1984年の「風の谷のナウシカ」に遡るのが懐かしくもあり。
 正直な話、私はジブリ・アニメの良い鑑賞者ではありません。宮崎監督で一番おもしろい作品は「カリオストロの城」だと思ってますし(異論は認める)、「千と千尋の神隠し」以来、劇場作品は観ていません。
 観ていない人間が何をいうのかですが、実は、ジブリ作品が「国民的映画」になる一方で、作品が背負う「わかりにくさ」が宣伝の規模に見合うものか違和感を覚えていたからです。
 ただ、本書によれば、「時代を映し出す」べき作品は「割り切れなさ」を秘めるべきという意図があったといいます。
 消費者に望むものを提供することはできる。だが、見込まれる顧客層より広い範囲に訴えかけるには、それ以上のものを提示しなければいけない、というのは鈴木プロデューサーの信念であるようです。
 本書では、同氏が編集長を務めていたアニメ雑誌アニメージュ」の部数を意図的に落としたことについて触れています。

世のアニメーション雑誌が、『ヤマト』『999』『ガンダム』で大騒ぎしているなか、あえてまだ知名度の低かった宮崎駿の特集に32ページを割く。
(132頁)

 1978年のことです。当時の編集部を間近で見た大塚英志氏は次のように書きます。

それにしても、改めて思うのは鈴木敏夫の「変節」ぶりである。当初は富野に強く共感し、そして宮崎の磁場に一挙にもっていかれた。鈴木敏夫は意地悪な言い方をすれば、『ガンダム』から宮崎駿に『転向』したといえる。いや、それは正確ではないかもしれない。ぼくの勝手な印象だが、『ガンダム』に入れ込んだ方が鈴木敏夫にとっては「転向」で、「宮崎とともにやっていこう」と決めたのは「再転向」というか、そんな感じがした。
(315頁)

 いろいろアンビバレンツな背景が見て取れて興味深い。
 なお、同書の標題にある「二階」とは、著者の当時のアルバイト先であった徳間書店の編集部とのこと。当時の同社のたたずまいは、「コクリコ坂から」の終盤に登場する、理事長のビルにそっくりだそうです。やっぱり、本編を観なきゃダメかしら。
 なお、アニメージュを巡っては、鈴木敏夫氏の前任でもある初代編集長である尾形英夫氏の著作がおもしろい。

あの旗を撃て!―『アニメージュ』血風録

あの旗を撃て!―『アニメージュ』血風録