改正漏れの遡及適用
いささか旧聞に属しますが、bottmさんのところから
18年7月12日付け11430号の熊本県公報の「熊本県看護師等修学資金貸与条例施行規則の一部を改正する規則」で、国立病院の独法化と国立大学の国立大学法人化に対応しているのを発見。
あれれ、だい〜ぶ以前に、バタバタと改正した記憶が・・・、と思って附則をみてみると、「この規則は、公布の日から施行し、平成16年4月1日から適用する。」とのこと。
http://bottom.at.webry.info/200610/article_24.html
え?と思って県報を確認
【熊本県看護師等修学資金貸与条例施行規則の一部を改正する規則】
熊本県規則第55号
熊本県看護師等修学資金貸与条例施行規則の一部を改正する規則
熊本県看護師等修学資金貸与条例施行規則(昭和37年熊本県規則第55号)の一部を次のように改正する。
第2条の表中「国又は地方公共団体」を「国、独立行政法人国立病院機構、国立大学法人又は地方公共団体」に改める。
附 則
この規則は、公布の日から施行し、平成16年4月1日から適用する。
http://www.pref.kumamoto.jp/sec_img/kouhou/県11430.pdf(フォルダの階層に日本語の「県」の設定があるためリンクがうまく貼れません。「http」から「pdf」までをブラウザにコピーペーストしてください。)
あらら、改正漏れの「追っかけ」って、遡及適用する必要があるの?
【遡及適用の意義】
Q 規則を一部改正し、当然、新年度当初から施行すべきものであったにもかかわらず、その改正作業をせず、したがって、公布・施行もすることなく、実際の事務はその改正すべきであった内容に従って運用していた。この場合、当該規則を年度途中で改正し、是を遡及適用することで問題ないか。A 結論から申し上げますと、御照会の場合は、遡及適用が不可能な場合ではないかと考えられます。したがって、施行期日に関しては、附則に「公布の日から施行する。」と規定し、将来に向けて施行するほか、手段がないことになります。
上記のようになる理由は後述しますが、このような附則の表記では「この規則の公布前に行った事実行為」に対して、残念ながら、何ら法的効果を与えないことになり、また、その瑕疵をなんら治癒するものとはなりません。しかし、この事実行為を行っていた法的空白期間は、もともと、取り返しが付かないことですので、このように放置しておくしかないのではないかと考えられます。
(中略)
遡及適用が行われる場合とは、「既に発生、成立している状態に対し法令が後から規制を加え、その法律関係を変更するものである」ことになります。したがって、「後から法規制を加える」のが、遡及適用ということになります。
しかし、御照会の場合は、この逆の現象のようです。規則の効力が発生する前に、あたかもその規則が効力を発生していたような事実関係が先行しているわけです。さらに、この先行した事実行為について、後日、規則改正を行い、是を遡及適用して先行した事実行為にいわば法律行為としてのお墨付きを与えようとしているわけですが、仮に、これを遡及適用しようとしても、この場合は、その事実関係は既に済んでいるため、遡及適用するにもその余地が残されていないわけです。したがって、遡及適用することは、不可能のことと考えます。
(後略)
「自治体法務例規担当者のための主要法令トピックス第10版」38ページ
では、熊本県の規則における遡及適用は妥当でないのか、という疑問になりますが、改正の対象となる熊本県看護師等修学資金貸与条例施行規則を読んで、以下のように考えてみました。
同規則の詳しい運用までは不明ですが、修学資金の貸与というその事務の性格から、既に時間的には経過しながらもこれから支給の対象となるものがあり、それらに対して上記の「既に発生、成立している状態」としてデリケートに対応するものとして遡及適用したのかな、と。そして、平成16年までの遡及はその意向に「お付き合い」したのかなあ、なんて。
いずれにせよ人ごとではありません。つるかめつるかめ。