自治体法務の備忘録

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「ワークブック法制執務」と「法制執務詳解」

 先日、ご紹介させていただいた、24年ぶりの「ワークブック法制執務」の改訂について、霞ヶ関の方々からさっそくご反応いただきました。

法制執務」で検索すれば類似書は見つかりますが、本書が霞が関スタンダードです。何か困ったときに3分以内でこの本の該当箇所が探し出せる(同じことの言い換えですが、これはこの本には載っていないな、ということが問題を見た段階でだいたい見当がつく)ぐらいに使いこなせれば、法令案作成担当として使い物になると認めてもらえるような、そんな本です。霞が関においてもっとも冊数が多い書籍候補の筆頭でしょう。
http://bewaad.com/2007/11/27/345/

 kei-zu氏(11/26付) 経由で、聖典たるワークブック法制執務の改訂版の発刊の報に接する。これは買わざるを得ませんな。
http://www.seri.sakura.ne.jp/~branch/diary0711.shtml#1126

 自治体の職員の方々におかれては、むしろ

自治立法実務のための法制執務詳解

自治立法実務のための法制執務詳解

の方がスタンダードであろうと思うところで、課内で法制執務を担当して間がない後輩に聞いてみたやり取りは以下のとおりです。
私「改め文を書くときに『ワークブック法制執務』って読むかい?」
後輩(女性)「『法制執務詳解』は参考にしますけどぉ、『ワークブック法制執務』は読んだことありませぇん」(そういう風に喋る人なのです)
 「法制執務詳解」がかくも自治体法務職員の頼りにされている理由は、昭和58年に初版が発行されて以来、4回の改訂を経て、内容がアップデートされていることと、掲載例の網羅性、そして引きやすい目次構成によるものでしょう。
同僚「『ワークブック』って、調べたいことがあっても引きにくいじゃないですか。国で、法令改正の初心者の人は、どうやって改め文を書くんですかね」
私「うーん、『ワークブック』を見ながらとりあえず書き上げて、先輩にガシガシ修正を受けるOJTなのかなあ」
同僚「『法制執務詳解』を引きながらであれば、それなりの改め文が書けるじゃないですか。『ワークブック』だけ見て書こうとするから、準則であんまりな改め文ができるんじゃないですか?」
私「わーわーわー」
 「ワークブック法制執務」はQ&Aの問答形式で構成されており、私が出版社の方からいただいたチラシに掲載された印刷見本を見ると、このたびの改訂に当たって、その構成に変更はないようです。
同僚「っていうか、国では改め文検証システムが導入された筈でしょう。なんであんな改め文になるのかなあ」
私「準則の作成ごときじゃ使わせてもらえないのかもよ」
 同僚は国でも「法制執務詳解」を利用すれば良いのにという口ぶりですが、同書の掲載内容には、自治体の例規が含まれ(幾つか例を挙げると、77頁の滋賀県条例、83頁の東京都規則、341頁の栃木県条例など)、また、著者ご自身が自治体の職員でいらっしゃるという点で、やはり、書名に掲げられるとおり「自治立法実務のための」参考書であるのでしょう。
 また、「法制執務詳解」では、著者が属される自治体のローカルルールなのか、独自のご見解と思われる記載もあり、利用に当たっては注意も必要です。

 「各号列記以外の部分中」は、そこで改正しようとする字句が同一条項中の他の部分にもあり、その部分の字句は改正しない場合のように、これを用いるほかに方法がないやむを得ない場合に限り、用いるものとされている(中略)。このため、法令における取扱いは、このような場合、「各号列記以外の部分中」を用いない方式によるものが多いようである。しかし、条項中の字句の改正は、前の方から順に行われている方が、改正箇所を知る上で利点があるので、各号列記以外の部分と各号中の双方の字句を改正する場合には、前の方から順に改正を行うために改正箇所を特定する手段として、「各号列記以外の部分中」を用いる方が適当であろう。
(336〜337頁)※強調はkei-zu

 同書は次回の改訂に改訂に際しては、多くの自治体で運用されている横書きの例規を想定したものとすることが検討されているそうであり、そうなると、自治体職員向けの性格がより明らかになるでしょうね。