自治体法務の備忘録

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各号列記以外の部分中

 前述のbewaadさんによると、「『ワークブック』も時代遅れの部分がある」とのことで、改め文における「各号列記以外の部分中」の記載について参事官に指摘されたとのことです。

内閣法制局参事官
 この規定はどこから持ってきたの?
webmaster
 ワークブックの○○ページです。
内閣法制局参事官
 (該当部分に目を通して)うーん、最近ではこういう書き方はしないなぁ・・・。
http://bewaad.com/2007/11/27/

ここで、行政事件訴訟法の一部を改正する法律の地方自治法の改正規定に「各号列記以外の部分中」がない場合を想定してみますと、第2号や第4号の「行政庁」の下にも「(国の関与が・・・)」と加えられてしまって都合が悪い、ということとなります。では、「各号列記以外の部分中」を使わずに同じ改正を行う(=webmasterが当時参事官の指摘を受けて書き直したやり方でやる)場合にはどうすればいいのでしょうか?

 第251条の5第1項中「行政庁を」を「行政庁(国の関与があつた後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を」に改め、同項に次のただし書を加える。(ただし書略)

とすればよいのです。同項第2号は「行政庁の」、第4号は「行政庁が」ですから、これらの号まで改正されてしまうことはこの書き方で回避できます。すなわち、これで同じ改正が可能となるのです。
http://bewaad.com/2007/11/28/346/

 なるほど、各号の部分も地の文としての認識で語句を引っ張るわけですね。引用箇所を探すのがちょっと困難になるかもしれませんが、改め文自体の文章としてはすっきりします。
 とはいえ、衆議院のサイトで議案を検索すると、166回国会の閣法でも「各号列記以外の部分」の記述は認められるところです。(http://www.shugiin.go.jp/itdb_search.nsf/ITfoSubSearchB?OpenForm&Seq=1
 うーん、なんでかなあ。
 なお、前回、私が「著者が属される自治体のローカルルールなのか、独自のご見解と思われる記載」として引用した「各号列記以外の部分中」の用法ですが、

条項中の字句の改正は、前の方から順に行われている方が、改正箇所を知る上で利点があるので、各号列記以外の部分と各号中の双方の字句を改正する場合には、前の方から順に改正を行うために改正箇所を特定する手段として、「各号列記以外の部分中」を用いる方が適当であろう。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20071128/p1

ちょっとわかりにくいと思いますのでご説明しましょう。

【例1】
第○条 ---------A-------------
 一 ------------------------
 二 ------B----------------
 三 --------C--------------
 四 ------------------------

の構成で「A」「B」「C」の語句の改正を行おうとする場合であって、「A」の語句が第一号から第四号までの各号にないときは、一般的に次のようにするとされています。

 第○条中「A」を「×」に改め、同条第二号中「B」を「×」に改め、同条第三号中「C」を「×」に改める。

 つまりは、

【例2】
第○条 ---------A-------------
 一 ------------------------
 二 ------B----------------
 三 --------A--------------
 四 ------------------------

のように、各号列記以外の部分にも「A」があってそちらは改正したくない場合に限って、「各号列記以外の部分中」として、改正の対象を限定しようとするわけです。

 第○条各号列記以外の部分中「A」を「×」に改め、同条第二号中「B」を「×」に改める。

 上記の「法制執務詳解」の記載では、これを「改正箇所を知る上で利点があるので」「前の方から順に改正を行うために改正箇所を特定する手段として」、【例1】の場合でも「各号列記以外の部分」を利用しようとするものです。

 第○条各号列記以外の部分中「A」を「×」に改め、同条第二号中「B」を「×」に改め、同条第三号中「C」を「×」に改める。

 なるほどね、ではありますが、法制執務においては、「改正対象の引用」以外にも、改め文自体の簡潔性も求められるであろうと思うところで、どうにもいろいろ難しいところです。
 まあ、所詮は、慣例によるところが一番大きいところでありましょうが。